M.M ハカセと助手と空に浮く島




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
3 7 4 58 〜1 2016/5/19
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<傲慢な天才少年とそれを意に返さない金髪巨乳お姉さんの組み合わせが絶妙ですね>

 この「ハカセと助手と空に浮く島」は同人サークルである「ふぉらん」で制作されたビジュアルノベルです。ふぉらんさんは私にとって大変印象深いサークルさんです。初めてふぉらんさんを訪ねたのはC79の時でした。この時の私はまだ島サークルを回るという習慣がなく、壁サークルだけ回って終了するスタイルでした。そしてこの時は当時から大手壁サークルであるねこねこソフトのシナリオライターである片岡とも氏の個人サークル「ステージ☆なな」さんに行ったのですが、そこで「Cherry Garden」という同人ゲームサークルの無料情報誌を配っておりました。この中にはステージ☆なな以外にも5つのサークルさんが紹介されており、全て島中でした。その中の1サークルがこのふぉらんさんであり、折角ですので新作である「オルフェウスの銀琴」を購入しプレイしました。これが短いながらもテーマがハッキリした非常に印象深い作品でして、島中にはまだ見ぬ無数のビジュアルノベルがある事を初めて知ったのです。今私が多くの同人ビジュアルノベルをプレイする切っ掛けをくれたサークルさんであり、オルフェウスの銀琴は作品以上に印象深いタイトルとなっております。現在ふぉらんさんは「スミレ」という美少女ゲームブランドを立ち上げており活動を停止しております。

 今回レビューしている「ハカセと助手と空に浮く島」はそんなふぉらんさんが2009年に作成したビジュアルノベルです。タイトルの通り主人公はハカセでヒロインは助手です。ですがこのハカセと助手ですが、どちらも性格的にかなり癖のあるキャラクターとなっております。まずはハカセですが、なんと若干14歳の天才少年です。ありとあらゆる学問に精通しており、世界中が彼の頭脳を欲しがっております。ですがそれが災いして性格は非常に傲慢。全ての人を見下す下衆な性格です。そんなハカセの元に突然やってきたのが助手である金髪巨乳のお姉さんです。とにかく見た目通りハツラツとしており、ハカセの辛辣な言葉なんか意に返さずグイグイと引っ張っていきます。物語は助手がハカセを拉致し、空に浮かぶ謎の島へ監禁するところから始まります。

 最大の魅力はやはりハカセと助手の会話ですね。上でも書いた通り傲慢な性格のハカセとそれを意に返さない助手ですので、とにかく始めは衝突しまくります。会えば口喧嘩ばかりですので2人っきりの空の島での生活が上手くいくのか先が思いやられます。ですが勿論そんな衝突だけの関係では終わりません。空の島の秘密を解き明かすのは並大抵の事ではなく、2人っきりの時間は長期化していきます。そんな長い時間関わりあえば、当然お互いを想う気持ちは変化していきますね。ハカセは助手の事をどう思っているのか、何故助手はハカセを拉致して空の島へ連れて行ったのか、そもそも空の島の謎は何なのか。色々な事を想像しながら読んで頂ければと思います。

 プレイ時間は私で30分程度掛かりました。壮大な設定の割にはかなりあっさり終わります。場面展開がかなり速いのでシナリオ上での時間はサクサク進んでいくのですが、その分場面場面でのエピソードは短めですので是非皆さんで登場人物たちの気持ちを保管しながら読んで欲しいですね。そしてこの作品はボイスがあります。本当あっという間に終わりますので、あえてオートにしてそのままマウスから手を離してエンディングを迎えるのも良いと思います。まずはハカセと助手のやり取りを楽しんで作品の雰囲気を掴んで頂ければと思います。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<助手が姉として心からハカセに接した時、その瞬間に最強のタックが生まれたのですね。>


「アレを蔑んでいいのはオレ様だけだ」


 この物語はきっとハカセのこの言葉を引き釣り出す為に用意されたのですね。天才であるが故に誰とも対等な立場になれず1人孤独な毎日を送っていたハカセ。唯一の心の拠り所であるはずの姉も行方不明で、姉を探す事だけが生きがいの人生でした。そんなハカセの内面にグイグイと突っ込んでくる存在は、ハカセの中でもどこか姉らしさを感じていたのですね。言葉では否定していましたけど、本心では満更でもないことが伝わってきました。これからもきっとこの2人は良いコンビとして研究生活を送っていくのだと思います。

 最後までプレイして、終始ハカセの唯我独尊な振る舞いが印象的でした。始めは随分と生意気なガキだなと思いましたが、本当に数週間で古代の超文明の謎を解き明かし古代兵器を使いこなせるようになりました。そしてそこまでしても満たされなかったハカセの心。結局のところ、自分がどんなに研究で成果を上げても見てくれるのはその能力のみで誰も内面を見てはくれませんでした。唯一信頼している姉が見つからないのならば生きている意味がない。空の島で飛び降りようとした時のハカセの心に、未練は殆どなかったのだと思います。

 そんなハカセの心に風穴を開けたのが助手でした。今までは姉としてハカセの事を信頼し特殊な境遇に同情して優しく接していました。ですが飛び降りようとしたハカセに対して強烈な叱咤、その姿はまさに姉の姿そのものでしたね。ハカセにとっても初めての経験だったのではないでしょうか。熱を出した時に看病してくれたりいつも美味しい食事を作ってくれた存在から真っ直ぐに叱られたのです。それは確かにハカセの心に突き刺さりました。そして彼女であれば一緒に時を過ごしたいと思ったのでしょうね。

 最後、世界の科学者を相手に見事なコンビネーションで撃退しました。あれはお互いを信頼し呼吸が合ってなければ出来ない芸当です。傲慢な天才ハカセとそれを尻に敷く金髪巨乳の助手。もしかしたら世界を敵に回せるほどの最強タックかも知れませんね。事実世界の著名な科学者を一気にポンコツにしてしまいましたし古代兵器はハカセの物ですので既に世界を敵に回しているのかもしれません。でもそんな事は関係ないですね。ハカセは唯一信頼できる姉を見つける事が出来たのですから。ありがとうございました。


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