M.M Girls never die




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
5 7 - 68 1〜2 2024/2/24
作品ページ(なし) サークルページ



<美しい背景描写を眺めながら、主人公と共に2人の少女の秘密を探ってみて下さい。>

 この「Girls never die」は同人サークルである「みるみるそふと」で制作されたビジュアルノベルです。みるみるそふとさんの作品も、今作で累計7本目となります。購入したのはC101で同人ゲームの島サークルを回っている時です。その後プレイ開始まで時間が空いてしまい、先日のC103にてパッケージを見た時にプレイせねばと思い出し現在のレビューに至っております。これまでの作品と変わらず、可愛い女の子のパッケージが印象的です。そして今作は向かい合う2人が意味ありげな表情をしております。「Girls never die」というタイトルより、何か普通ではない秘密があるのかも知れません。これまでも様々な属性のヒロインが登場してきたみるみるそふとさんの新作です。楽しみにプレイし始めました。

 主人公である竜二は東京で生活している社会人です。田舎には仕事が無いという至極現実的な理由で東京で就職したのですが、ある日出社すると自分が所属していた部署が廃止になってました。つまるところ、リストラされてしまったのです。突然訪れた現実に戸惑いますが、とりあえず東京にいてもしょうがないという事で実家のある田舎へ里帰りする事にしました。サッパリしながらも竜二の事を気に掛ける母親と共に、暫く実家へ滞在する事に決めました。ですが、そんな田舎のんびりしようと決めた矢先に2人の女の子と遭遇します。どこか浮世離れした2人に戸惑いつつも、これ以上の関係は無いと思っておりました。もちろん、ここで接点が終わる事にはならないんですけどね。2人の女の子との出会いから、竜二の運命が大きく変化していきます。

 この作品を語る上で2人の少女に触れる事は必須なのですが、同時にそれが最大のネタバレになってしまいます。その為ここで触れる事は出来ませんが、同時に主人公である竜二の人間性もまた大切な要素となっております。みるみるそふとさんの作品の特徴として、主人公キャラの落ち着きと言いますか状況を冷静に分析して行動する様子が挙げられます。どこか達観しており、特殊な状況に慌てる事無く自分の中で咀嚼して次の一手を打ちます。常識的に取り乱すであろう場面で取り乱さない、これもまた大きな特徴です。そして見方を変えれば、常識に捕らわれずありのままを見つめて行動します。これが、2人の少女にとって大きな支えになるのです。そしてこれは、私達が普段生活する上でも大切なのかなと思いました。不測の事態が発生すれば、誰もが驚きますし正常性バイアスが働いたり逃げたりしたくなります。ですがそうではなく、その場の状況を冷静に見つめて行動できるのは大きな意味を持ちます。みるみるそふとさんの主人公はかなり人間が出来ていると言いますか人間離れしている冷静さですが、この姿勢は素直に羨ましいと思いました。まずはこの主人公竜二と共に、コロコロと展開する場面を見つめ状況を整理して読み進めていって欲しいです。

 その他の要素では、背景描写が印象に残りました。舞台は竜二の故郷である田舎なのですが、多くの枚数を使用して建物の様子や山などの自然を表現しております。正直なところ、日本的ではなくどこか異国の地を想像してしまいました。尤もその事はマイナスに働く事はなく、むしろ丁寧にハッキリを描かれた背景描写で舞台のイメージを植え付けてくれます。かなり細かい部分まで描かれておりますので、是非メッセージウィンドウを消して眺めてみて欲しいです。BGMも場面に適したものを使用しており、場に合ったイメージを与えてくれます。その他システム周りも基本的な機能は揃っておりプレイに不便さを感じません。特にスキップモードはかなり高速で、一度読んだ場所であれば一瞬で先まで飛ばしてくれます(既読スキップのあるなしは分かりませんでした)。この辺りは、沢山の作品を制作しているみるみるそふとさんの実績が伴っていると感じました。

 プレイ時間は私で1時間50分程度掛かりました。この作品は選択肢が幾つかあり、エンディングのパターンが分かれます。割と大事な場面で選択肢が登場しますので、よく考えて選ぶことになると思います。上でも書きましたがスキップがかなり速いので、総当たりするのはそこまで苦労しないと思います。繰り返しになりますが、全体を通してとにかく場面がコロコロと変わりますので状況を整理しながら丁寧に読み進めて行くことをおススメします。達観した主人公と2人の少女の秘密に、一番置いてかれるのは間違いなくプレイヤーである自分たちです。そこまで長い作品でもありませんので、じっくりと世界観に浸ってみてください。そして最後の決断について自分だったらどうするか考えてみて欲しいです。楽しい作品でした。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<不老不死は死んでいるのと同じ、では彼らは「生きている」と実感する事は出来ないのでしょうか?>

 最後まで読んで、竜二はよくもまあこの劇的な環境の変化に動じず美玲と一緒に生活する事を選んだなと感心してしまいました。仕事をリストラされただけでも辛いのに、自分が不老不死になってしまったんですからね。自分が同じ状況だったら結局のところ竜二と同じ決断を選んだんだろうなと思いますけど、それでもここまで簡単に割り切れるかと言ったら難しかったでしょうね。

 まず始めに、やはり留未についてもっと深く知りたいと思いました。周りの会話から推定して、何だかんだで留未は美玲の事だけ考える一辺倒な性格ではない事は想像できます。それでも、竜二についてどう思っていたのか、美玲について盲目的になる理由は何なのか、そもそも留未のどこか人間離れした身体機能は何か理由があるのか、この辺りについて答えが知りたかったです。きっと、これはいつかどこかで美玲と竜二が留未と再会した時に分かる事になるのでしょう。リーチェから襲撃され致命傷を負ったにも拘らず死体が無いところを見ると、留未もまた不老不死になってしまった事は容易に想像出来ますからね。是非この辺りを描いたアフターストーリーの制作を強く希望します。そして、少なくとも彼ら3人が幸せである事を祈ってやみません。

 全体を見て、多くの人たちが美玲の不老不死に巻き込まれておりました。留未やリーチェは勿論ですが、研究員である珠璃は隠れた功労者であり個人的に最も人間的に好きな登場人物でした。医療の道を目指して志高く今の仕事につきましたが、結果として自由を失い研究所から出れない日々を送る事になりました。バーでお酒を煽る姿から、本当に今の生活を望んだのか分からなくなります。それでも自分の理想の為に、そして不老不死という存在がいる以上今の研究者としての生活を続けていくのだろうと思います。「半端に付き合うと酷い目にあう」という彼女のセリフは、彼女の人生から得た大きな教訓なのでしょうね。竜二の検査結果から、間違いなく彼もまた自分と同じ側の存在になってくれるかもと期待した事と思います。同時にこちら側に来てはいけないとも思ったのでしょうね。そんなアンビバレントな姿が印象に残りました。

 そして、不老不死というものについての考え方が色々な人のセリフから聞かされました。特に印象に残ったのは「不老不死は停滞している、つまり死んでるのと変わらない」というセリフでした。現実世界において、命に限らず永遠に存在するものはありません。だからこそ、限りある生の中で何かを成し遂げる姿に人は意味を見出すのだと思います。しかし不老不死であれば永遠の時間がありますので、急がずともやろうと思えばどんな事だって出来るのでしょう。行動すれば必ずいつか成功する事が約束されている事柄に、確かに人は感動しないかもしれませんね。そうであるのなら、美玲の「私は、死にたい」というセリフはとても当たり前に思えました。死ぬからこそ、生きていたという事を実感できるからです。「傷つく事で生を実感している」というセリフも、どこか物悲しいですね。傷ついてもみるみるうちに傷が治ってしまう、輪廻から外れた自分の姿に何かを諦めるのは必然かもしれません。

 ですが、もう美玲は一人ではありません。隣には同じく不老不死になった竜二がいます。「それはもう、そういうもの」と、早く竜二は今の状況を割り切っていました。この達観できる姿勢は、もしかしたら不老不死に最も必要な性格なのかも知れませんね。あれこれ悩んでも、ましてや不老不死にならなければ良かったなんて後悔しても、もはや意味が無いのですから。ただ少なくとも、美玲と竜二は同じ運命にあります。きっと留未も同様ですね。彼らの終わりなき生活、いつか終わる日が来るのでしょうか?いつの日か彼らに「生きていた」と実感できる時が来ることを祈って、本レビューを終了したいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


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