M.M 幽霊11号 第一話


<志賀健二郎のキャラクターを楽しみながら、是非自力でこの依頼の真実を見届けてみて下さい。>

 この「幽霊11号 第一話」は同人サークルである「オセット団」で制作されたビジュアルノベルです。「オセット団」さんの作品はこれまでプレイしたことがなく、今回レビューしている「幽霊11号 第一話」が初めてとなります。非常に渋い感じの主人公。探偵ものという事でハードボイルドな展開が想像できます。また探偵アドベンチャーノベルというジャンルという事で割とプレイヤーに選択させて物語を進めていく内容のようです。久しぶりに頭を回転させて読もうと思いプレイを始めました。

 主人公である志賀健二郎は28歳の自堕落な生活を送る青年です。亡くなった父親が開設していた「志賀探偵事務所」を引き継ごうと思っているのですが、中々その一歩が踏み出せず思い悩んでおります。それでも数少ない友人や探偵仲間の繋がりは残っており、彼らに時々目をかけてもらいながら生活しております。そんな数少ない友人のひとりである大森貴明から「人探し」の依頼を受けます。この依頼そのものは大したことのない内容だったのですが、その後思わぬ形でこの探し人が行ってきた事実を向き合うことになるのです。

 最大の魅力は主人公のキャラクターですね。公式HPをご覧になれば分かりますが、なかなか渋い印象を出しております。ハードボイルドと言っても差し支えないと思います。ですがそれは唯自堕落なだけであってハードボイルドも何もあったもんじゃありません。それでも探偵としての信念は持っており、時に熱くなる姿はとても人間味を感じさせます。また割と周りに振り回される性格のようで、友人である大森貴明やメインヒロインとなる樹ハルの奔放な性格に次第に飲まれていきます。プレイ前と後では確実に印象が変わるでしょうね。是非志賀健二郎が今回の依頼を通じでどのように自分の気持ちにケリをつけていくか見届けてもらえればと思います。

 プレイ時間は私で1時間15分程度掛かりました。この作品は探偵アドベンチャーノベルですので、時々マップ探索や選択肢などプレイヤーに推理させる部分もあります。マップ探索は「見る」「話す」「調べる」などのコマンドを選んで比較的自由に見て回れますのでアドベンチャーらしい楽しさがあります。その時に入手した情報は是非メモを取って欲しいですね。最終的に探し日とのところにたどり着けるかは、全てプレイヤー次第となります。まあ総あたりで選択していけば必ずゴールにたどり着けるのですが、是非自力でこの依頼の真実を見届けてみて下さい。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<投げやりでありながら思い立ったら突っ走るその性格、志賀健二郎には間違いなく探偵の血が流れてますね。>

 結局のところこの主人公は最後の最後まで投げやりでしたね。依頼を受けるのも投げやり、調査の仕方も投げやり、樹ハルへの接し方も投げやり、しまいにま探偵業を再開するところも投げやりでした。ですがこれこそが志賀健二郎の魅力。投げやりですが信念は持っておりましたので、これから樹ハル助手とあーだこーだ言いながらそれなりに探偵をやっていくのだと思います。

 プレイし終わって思ったのはなかなか怖かったという事ですね。始めは素朴な依頼かなと思ったのですが、少しずつ明かされていく真実を見るとなんともまあ猟奇的な事件でした。腐乱臭の漂うアパート、猫の死体の目撃証言、そして幽霊屋敷、終いには矢野義道の死体ですからね。志賀健二郎もいきなりとんでもない事件に首を突っ込んでしまいました。果たして矢野は本当に自殺なのでしょうか。幽霊に会いにいくとはどんな意味なのでしょうか。この事件、まだまだ収束しなさそうですね。第一話ですので今後第二話、第三話と展開される中で少しずつ明らかになってほしいと思います。

 それにしても本当に志賀健二郎は面白いキャラクターでした。唯の自堕落なだけではなく、割と義理堅いところも持ち合わせており、だからといってやる気満々という訳でもなく、それでいて頭はそれなりに冴えております。それでも一度やると決めたら突っ走る様子は、やはり探偵の血が流れているんだなと思いました。本人がどう思っているかは分かりませんが、無自覚な当たり自分が本質的に探偵屋だという事に気づいておりませんね。本物の探偵である志賀健二郎、そして社交的で行動力のある樹ハル、今後彼らの前にどんな事件が舞い込んでくるか楽しみです。

 最後にその他の要素について書こうと思います。BGMやSEも使い方が絶妙で、事件の真相に近づくにつれ緊張感が高まりました。そして志賀健二郎が自分の意思を明確にしたタイミングで流れる明るいBGMが一番気に入りました。主人公の心情とリンクしてこそBGM、プレイヤーも巻き込んで一緒に盛り上がる演出でした。後はマップを矢印で選択するシステムは是非今後も取り入れて欲しいと思いました。地図で幽霊屋敷を当てる場面や矢野義道の死体の現場検証など、本当に探偵になっている気分になりました。これこそ探偵アドベンチャーノベルだと思いました。キャラクターに魅力有り、システムに拘り有り、短いながらも十分探偵気分を楽しめた作品でした。ありがとうございました。


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