M.M ふらすと!レヴォリューション 2nd Geek




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 6 - 81 7〜9 2016/8/10
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<コメディ全面ながらも痛快で辛辣なネタは、私たち非リアに対する皮肉にすら取れると思いました。>

 この「ふらすと!レヴォリューション 2nd Geek」という作品は同人サークルである「ヨーグルシンジケート」で制作されたビジュアルノベルです。ヨーグルシンジケートさんと初めてお会いしたのは1年前の9/21に大阪で開催された同人ゲーム.fesというイベントででして、この時手に入れる事が出来たのが今回レビューしているふらすと!レヴォリューション 2nd Geekです。ジャンル名が「リア充撲滅!ハートフルラブコメディ」との事ですが、本当にこの言葉通りでモテない主人公がリア充な奴らに立ち向かいながらヒロインと関係を深めていく基本コメディの恋愛ものでした。

 主人公はモテないキモオタの高校生・上野達樹。クラスのリア充からはバカにされ、数少ない童貞オタク仲間と供に鬱屈した毎日を送っていました。趣味は美少女ゲームで宝物はタマ姉のフィギュアとそのオタクっぷりとコンプレックスは筋金入りで、まさに典型的なキモオタそのものです。それでも達樹の周りには誰もが目を留める美少女が3人もおり、オタク仲間の中からも「リア充!リア充!」と言われております。それでも自分に自信のモテない弄れたキモオタですのでそんな彼女たちにアタックすることも出来ず、自分は決して結ばれないだろうと思い込んでいたのです。そんな3人の美少女と突然距離を深めるイベントが発生します。その時達樹はどう行動するのか?果たしてリア充は撲滅出来るのか?コメディタッチで書かれる軽快なテキストを楽しんで欲しいですね。

 タイトルに「2nd Geek」とあります通り、この作品は前作である「ふらすと!レヴォリューション」の続編となっております。それでも前作をプレイせずともタイトル画面であらすじを読むことが出来ますのでプレイしなければならない訳ではありません。私自身前作は未プレイですが、キャラクター同士の関係は分かりましたし十分楽しむ事が出来ました。内容としては3人のヒロインそれぞれを中心とした3つのシナリオで構成されており、それぞれが独立しております。タイトル画面からどのヒロインのシナリオがいいか選ぶ事が出来ますので、お気に入りのヒロインからプレイするのも良し、メインディッシュは最後に残しておくのも良し、是非お好みの女の子から選んでみて下さい。

 最大の特徴は非常に軽快なテキストです。上でも書きましたが主人公は根っからのキモオタであり、その脳内は基本エロいことで埋め尽くされております。そんな煩悩がダダ漏れになっているテキストは誰もが「うんうん」と頷いてしまうものであり、非常に共感出来ます。加えて時事ネタやパロネタをさり気なくではなくもう隠す気もなく前面に押し出しております。間違いなく商業でやってはいけないテイストですね。もう全てのネタを拾い上げるだけで精一杯であり、終始テンション高く読む事ができます。こういうのをセンスが良いと言うのだなと感じました。センスというよりも頭の良さなのかも知れません。全て計算され尽くしたテキストは説明が大変難しく、読んでみないと伝わりませんね。

 加えて演出も色鮮やかでした。まずBGMや効果音が場面場面でコロコロと変わり、主人公たちの心情をストレートに反映しております。フリー素材ながらも使い方が絶妙であり、これもセンスの良さを感じました。続いてビジュアルですが、これも上で書いたパロネタを隠すことなく前面に出しております。ネットサーフィンをしていたら誰もが一度は見たことのあるような画像が登場し、笑わせてくれます。ジャンル名に「リア充撲滅!」とありますが、もしかしたらこの作品はそういった非リアの人たちが精一杯楽しめるように考えて作られたのかも知れませんね。コメディ全面ながらも痛快で辛辣なネタはそんな非リアに対する皮肉にすら取れると思いました。

 プレイ時間ですが私で7時間50分程度かかりました。それぞれのヒロインで2時間30分〜3時間というボリュームで、それぞれが独立しておりますのでまるで3つの作品が一つになったかのようです。選択肢も少なからず登場し、ちゃんと正しい選択をしないとトゥルーエンドにたどり着けません。ですが難易度は決して高くはなく、仮にバッドエンドに行っても何故バッドエンドに行ったか考えれば自ずと正しい選択が見えてくると思います。ただ演出が激しい分既読スキップは割と遅めですので、一度読んだ文章を読みたくない人にとっては多少ストレスになるかも知れません。そのような方は是非それぞれの選択しでセーブをとり、次回やり直す時に二度と間違えない気持ちで望んでみてください。選択肢総当りだとかなり時間がかかります。まずはテキストの軽快さにテンションを上げ、シナリオの真相でゴクリと唾を飲みながら読んでみて下さい。ちなみに体験版ではなんとヒロインの1人である妹の千佳ルートが丸々プレイ出来ます。これでどのような雰囲気の作品なのか、もう言ってしまえばセンスの良さを感じる事が出来ると思います。かなりオススメです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<自分の大切にしている物を守りたいという気持ち、それがその人を輝かせ心を震わせるのかなと思いました。>

 どのシナリオも笑わせて頂きました。個人的にはガイアやシーンの最前線系の隠すつもりのないパロネタも面白かったのですがそれ以上に「ションボリアンハムスター」「かめはめ波=亀をハメる!」「シコシコ抜刀斎」「アルテマウェポン包丁」といったしょうもない下ネタの方がツボにハマりました。いやはや、天才とはこういう人の事を言うのだなと悟りましたね。同人ビジュアルノベルらしい楽しいネタが満載でした。

 それでも物語後半のシリアス部分では、モテない非リアの人であれば誰もが思ったような辛辣な事柄がテーマとなっておりました。香苗シナリオでクリスマスがいつの間にかリア充の性夜となっている今の日本に一矢報いようとする姿は、誰もが思ったであろう妄想だと思います。そして無謀ながらも果敢にリア充に対抗しようとした片山・今西・船山達、彼らの行動は決して許されるものではない自分勝手なものでしたが不思議と彼らを応援している自分がいました。彼らは行動したんですよね。行動せずウジウジしてるだけのキモオタよりよっぽど輝いていた気がします。ただやり方が間違っていただけです。相手を羨んでそれを潰そうとするのではなく、自分なりの愛を持ってそれを実現しようとすれば良かったんですね。そんな真実の愛の前に暗黒神グラファムヴァロスは呆気なく封印されました。このシナリオは、行動する事の大切さとその向けるべき行動性の大事さを描いたものだと思っております。

 ゆきのシナリオでは決してテレビや新聞では描かれないマスコミの姿を描いた非常に挑戦的なシナリオでした。人の気持ちよりもお金が優先される世界、それでも自分が大切にしているものを貫き通す姿勢が光りました。結果としてマスコミの食い物にされたゆきのでしたが、ゆきの本人はその事でマスコミを恨むような事はありませんでした。ただ、自分のせいでお店の存続が危ぶまれた3人の料理人を憐れむ気持ちだけでした。彼女が持っていたのは、ただ自分にとって何が一番大切かを考え料理に向かった純粋な気持ちと周りの人を不幸にしたくない気持ちだけでした。結果お金持ちにも有名人にもなれませんでしたが、大切なものを失わなかった彼女の姿はとても輝いて見えましたね。「ずっと僕の専属コックでいてください」というセリフがこれ程心に染み渡るとは思いもしませんでした。

 そして最後はまさかの超王道な兄と妹のこそばゆいラブコメでした。DQNや女の子、リア充に対して圧倒的に劣等感を感じていた達樹。そんな達樹でも体を張って彼らの前に立たなければいけない時が来ました。振り返ればただ千佳が可愛くて達樹がカッコイイだけのシナリオでした。それでも達樹がちゃんと槍摩久里雄に対して気丈に振舞わなければ描かれなかったシナリオです。私、達樹の性格を深読みして最後の選択肢で「殴るのは無しだよな〜」と思い込んでいて見事にバッドエンドに行ってしまいました。世の中には話し合いなど通用しない人種が少なからず登場します。命が掛かっている場面ではなりふり構っていられない。慎重と臆病は紙一重だなとしみじみ思いました。殴り殴られなんて、まさに青春の王道的な展開ではないですか!これ程まで達樹が輝いて見えた時はありませんでした。

 さて、3つのシナリオを振り返ってみたとき一つの共通点が見つかりました。それは輝くという事です。どの登場人物達も自分の大切にしているものを手放さず、それが侵害されるという状況で行動を起こしました。何も世の中的に認められている事で無くてもいいのです。例えば片山・今西・船山達みたいに、クリスマスに対する僻みでもいいんです。それが自分にとって大切であれば、それは決して手放してはいけないのです。守るべきものが犯される時に何もせず犯されるのは一番格好悪いです。自分の大切にしている物を守りたいという気持ち、それがその人を輝かせ心を震わせるのかなと思いました。

 そしてこの事に気がついたとき、まさにこの作品こそ彼らの行動の代名詞そのものだと思いました。パロネタばかりで下ネタばかりで絶対に世の中で大々的に認められない本作。それでもこれこそがヨーグルシンジケートさんが書きたかったものでした。もっと視野を広げれば、同人という世界そのものが輝きの象徴ではありませんか!自分が表現したいものを表現する、そしてそれが他者の手に広がっていく。これほど幸せな事はありませんね。そして自分勝手な理由やつまらない意地でこれら同人活動を潰す勢力は必ず存在します。そんな者と相対した時、きっとその時が私たちが勇気を出して立ち上がる時なのでしょうね。マスコミの様な社会的強者、クリスマスの様なリア充向けイベント、DQNの様な本能に従った奴ら、そういった分かりやすい物だけが輝けるのではない。自分が大切に思っているものを守りぬく時が輝く時である。この作品はそんな事を言いたかったのではないかと思いました。ありがとうございました。


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