M.M fault milestone two 上


 この「fault milestone two 上」は先に発売された「fault milestone one」の続きとなっております。その為レビューには「fault milestone one」を含めたネタバレが含まれていますので、ネタバレを避けたい方は避難して下さい。

・「fault milestone one」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。前作と本作の両方をプレイした方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。























































































シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 9 - 83 3〜4 2015/10/18
作品ページ サークルページ



<せめてファンタジーの世界の中だけでは夢を持ち、理不尽と戦い、熱い思いを共有しましょう。>

 ファンタジーの世界って、剣と魔法の世界にワクワクするのもあると思いますがそれ以上に夢を持った勇ましい登場人物たちに憧れを抱くのも重要な要素だと思います。現実世界では夢を持ってもその殆どは実現できず、社会の流れの中に消えてしまいますからね。この作品は、そんな表面上の姿だけではない人間的な部分も含め実にファンタジーしているなとプレイし終わって思いました。

 まずもって作品全体の完成度の高さに驚きました。冒頭のあらすじに始まり、メラノとの対峙での動きのある演出には度肝を抜かれました。実に効果的な演出。一度プログラムを強制終了させて死を実感させるのは実に心臓に悪いですね。それだけ効果覿面であり、製作者のセンスを感じました。その後たどり着いたのはビスカンタ国という海の綺麗な港町、新しい国へたどり着きました。ここでもALICE IN DISSONANCE十八番の美しい背景や登場人物達の豊かな表情が発揮されました。冒険者にとって新しい街はそれだけで輝いて見えるもの。背景がキラキラしていたのはそうしたセルフィーネやルーンの心情も反映したものなのだろうと思っております。BGMもどこかオリエンタルな雰囲気があり、場面ごとの使い分けで世界観表現を後押ししておりました。

 そしてそんな美しい世界で表現されたのは、まるでファンタジーとは思えない程の人間くさい醜い姿でした。始めはポート・サセアリーの海や町並み、そして海底都市であるネオ・サセアリーの全てが美しく見えました。ですがそれは格差社会の象徴であり、そこで生きている人間にとっては恨みの象徴のようなものでした。美しいと思っていたのはセルフィーネ達だけでした。ファンタジーなんて存在しない、そこには現実で生き現実で苦しんでいる人達がいるだけでした。

 港に降りて初めて出会った少年ソルもそのような境遇の1人でした。両親が行方不明になり、唯一の家族である妹は不可視の首縄という病気で余命僅かと宣告されておりました。幸せなんてありはしない。絶望したソルは妹を助けるという言葉のみを支えに殆ど考えなしに金を稼ぐ日々を送っておりました。夢も希望もありはしない。現状を恨み運命を恨み、妹が死んでしまうその日まで惰性で生活することを選択しておりました。惰性はそんなソルの境遇を改善しようとするリガンにまで八つ当たりをする程まで悪化しておりました。もう全てが面倒くさくなったのでしょうね。だったらこのまま何も考えずに流されて奴隷のように生きればいい、そう思うのも無理はないと思います。

 ですがそんな理不尽な状況をリガンは許しませんでした。理不尽に対しては徹底的に戦う、その姿はソルにとって余りにも輝いて見えたのでしょうね。「諦めることを諦めろ、苦しいのなら戦え、悔しいのなら反発しろ」「一人では何もできない。だから、もがけ。すがれ。その惨めな姿を人前に曝け出せ」「人は繋がることでしか理不尽とは戦えない。」「失敗を恐れていては成長しない」これはあらゆる困難と向き合い戦ってきたリガンだからこそ言えるセリフですね。普通の人が言っても相手にされません。そして彼女にはこのセリフに見合った気品と行動力、何よりもカリスマに溢れておりました。この人を信じれば自分の運命は変わる、必ず状況が良くなると思った事と思います。

 そんな勇ましいリガンとそんなリガンにケツを叩かれているソルを見守る存在がいました。それがルーンです。私、今作の主人公はルーンだと思っております。彼女がこの一連の出来事を俯瞰している唯一の人物でした。セルフィーネの変化に戸惑い、新しい国で言葉が伝わらない事に戸惑い、自分の髪型の変化に戸惑い、ルピカに戸惑いソルとミルに戸惑い、それでも周りについていこうと努力し力になろうと考えを巡らせておりました。実際彼女がいなかったら全ての作戦は成功しませんでしたからね。荷物運びや土運び、クロスボウやダガーの回避、トランシーバなどルーンだからこそ成し得た成果は沢山あります。ですが大事なことはそういった個々の成果ではなく彼女が自分で足掻いて考えてその成果を勝ち取ったことです。リガンが言った数々の勇ましく美しいセリフ、ソルが本当の意味でそれを実践するのはED後でした。ですがソルよりも先にルーンが実践してましたね。「考えて行動しない莫迦と考えないで行動する莫迦では、後者のほうが結果を出す。」これは間違いなくルーンの姿そのものですね。勿論ルーンは莫迦ではありませんが、まっすぐ行動したからこそそれなりの成果が出ましたし、最後ファーマギルドの連中に本気で怒りを覚えたのだと思います。

 社会人になって年数が経つと、なかなかこうした熱い気持ちになる事って無いと思います。熱くなる位なら流された方がいい、現状に不満を持っているけれど改善するのは面倒くさい。そもそも周りを巻き込んでも自分が無駄に苦労するだけ。そんな世の中ですので、上手くかわしながら何となく人生を歩んでいくのが普通なんだと思います。そうであるならば、せめてファンタジーの世界でだけは熱くなりましょう!理不尽と戦いましょう!そしてその先にある感動をみんなで共有しましょう!この作品は、そうした物事に本気になって取り組む事と同じ考えを持った同時が手を取り合う事の大切さを表現しているのだなと思いました。

 ソルとミルの物語は終わりました。ですが彼女たちの物語はまだまだ続きます。リトナは取り戻せるのでしょうか?そもそもリトナの症状は治るのでしょうか?ルピカの真意は何なのでしょうか?メラノ達の目的は何なのでしょうか?そして、彼女たちは無事ルゼンハイドに帰れるのでしょうか?物語は続きますが、目指すべきゴールは変わっておりません。ゴールに向かって諦めることなく足掻いてたどり着いた先になにが待っているのでしょうか。これからの展開が楽しみです。ありがとうございました。


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