M.M D.C.〜ダ・カーポ〜




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
8 8 8 80 30〜40 2006/5/17
作品ページ(R-18注意) ブランドページ(R-18注意)



<あまりにスタンダードなギャルゲー>

 今やアニメやマンガにまで広がり、ギャルゲー界ですっかりおなじみになった「D.C.〜ダ・カーポ〜」ですが、実は私が初めてプレイしたギャルゲーでもあります。細かく見れば「これはどうなんだ?」と突っ込みたくなる部分はありますけど、今思えば初めて出会ったゲームが「D.C.〜ダ・カーポ〜」で本当に良かったと思います。

 まず特徴として、その独特の世界観です。この「D.C.〜ダ・カーポ〜」というゲーム、一年中枯れない桜が咲き誇る島が舞台となっています。実際この設定には大きな意味があるのですが、それ以前にこの桜というものの描写が非常に上手く表現されています。それの醍醐味は主に背景画に現れるのですが、とにかく桜が綺麗に表現されているのです。時系列も2月〜5月ということで、そんなに季節感をそぐわない設定ですので、春の良い雰囲気を味わう事が出来ます。

 そして、キャラクターが非常に魅力的に描かれています。その理由として、キャラクターの設定にあります。登場するキャラクターは、「やきもち焼きで素直になれない妹」「勝気なクラスメイト」「おっとりした先輩」と、この当時ではあまりにスタンダードな設定です。しかし、これらのキャラクターが非常に魅力的に描かれています。七尾奈留さんの原画はバリエーションが多く、キャラクターを魅力的に見せています。そして声優さんの実力も皆高く、キャラクターをよく理解しています。何よりありふれたキャラクター設定ですので、プレイヤーはごく自然にキャラクターに愛着を持つ事が出来ると思います。

 そしてシナリオですが、前半部分はマップ移動システムで狙いのヒロインに会いに行けるシステムです。これはそのヒロインの魅力を十分に見る事が出来、いわゆる「萌えゲー」としては申し分ない出来です。そして後半部分は前半部分での選択により各キャラのシナリオに分岐した一本道のシナリオになっています。なかなか深い内容となってますので、十分読み応えがあると思います。しかし、この後半部分ですが、キャラクターによってなかなかシナリオのボリュームに差がありまして、それが残念なところです。

 あとシステムにやや特徴的なものがあります。一つ目は「目覚ましシステム」です。これは、前日の夜に朝何時に起きるかの選択肢が表示され、これによって次の日の朝の行動が変化し、シナリオが分岐するといったものです。まあ、選択肢の幅が広がった物としてとらえて良いものです。二つ目は「ガヤシステム」です。これは、前半部分のマップ移動の際に、周りのガヤガヤした音声から有力な情報を聞きだせると、ヒロインの居場所が分かるというものです。これは正直あまり意味が無いと思いました。理由は、ガヤがガヤっぽく聞こえなかったからです。まあ、ヒントを聞くという意味ではそれなりに意味のあるシステムであると思います。

 という訳で、ありとあらゆる要素において「良作」のレベルに仕上がっています。さらにキャラクター設定などを考えるとまさに「ギャルゲーのスタンダード」と言えると思います。もし身の回りでこれから初めてギャルゲーをやろうという方がいれば、是非オススメ出来る作品となってますので、時間とお金に余裕のある方はやってみては如何でしょうか。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<設定とテーマを両立出来なかった>

 このゲームのテーマとして一番言える事は、「枯れない桜の木によるの魔法からの自立」であると思います。この「枯れない桜のある初音島」は、「芳乃さくらの祖母」が「芳乃さくら」のために用意した世界でした。と言うのは、この「枯れない桜」は芳乃さくらの願い事を全てかなえてしまうからです。つまり、芳乃さくらはこの島にいる限り全て自分の思い通りにする事が出来ます。これは裏返すと、このネバーランドのような世界から抜け出せないという事も意味しています。つまり、枯れない桜を枯らすことは、芳乃さくらが大人への第一歩を歩む事と等しいのです。

 これは他のヒロインにも通じています。枯れない桜の力として、芳乃さくら以外の第三者でも稀に、その人が願った非現実的な願い事をかなえさせてしまうというものがあります。例えば、「白河ことり」の「人の考えている事が分かる能力」や、「水越萌」の「いつも夢の中で思い人と会える能力」がそうです。そして、彼女たちのシナリオもこういった能力からの「自立」がテーマとなっています。つまり、「枯れない桜」という設定が「自立」というテーマそのものを指し示していると言えます。そういった意味では非常に面白いロジックであると思います。

 しかしこの「設定」と「テーマ」の両立についてですが、全てのヒロインにおいて完成している訳ではなく、むしろ「芳乃さくら」「白河ことり」「水越萌」シナリオにおいてのみとなっています。その他のシナリオはあくまで「枯れない桜」に関係しているだけのシナリオであったり、もしくは全く関係なかったりしています。この辺の詰めの甘さが非常に残念に思います。普通にシナリオを読み進めるだけだとそれなりに面白いのですが、裏に隠された「自立」というテーマが見え隠れしているシナリオを考えると、やはり合点が行きませんでした。全ヒロインにこれを徹底させて欲しいとは考えてませんが、もう少しシナリオを練ることができたらよかったと思います。

 とか何とか言って、私が一番好きだったシナリオは「枯れない桜」に関係しない「美春シナリオ」だったりします。あのシナリオのテーマであった「自然死」ですが、どうやら私はこういった設定に弱いらしく、最後に美春ロボットが止まるシーンはこの「D.C.〜ダ・カーポ〜」でもっとも美しい部分だと思います。こう言うと誤解を招くかもしれませんが、「D.C.〜ダ・カーポ〜は美春のためにやれ」と言えなくも無いです。

 そんなこんなで色々と詰めの甘い部分はありますが、普通に人に薦められる作品であったとおもいます。春になったら、もう一回プレイしたい作品ですね。


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