M.M 調教する隣人
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
6 | 6 | - | 75 | 6〜8 | 2020/2/20 |
作品ページ(R-18注意) | サークルページ(R-18注意) | DL版 パッケージ版 |
<この作品を、自分のM属性判定に是非活用してみて下さい。Mだと思っていた自分が恥ずかしい。>
この「調教する隣人」という作品は、同人サークルである「紫眼球水槽」で制作されたビジュアルノベルです。紫眼球水槽さんの作品をプレイしたのは今作が初めてです。切っ掛けはC97で同人ゲームの島サークルを回っている時でした。パッケージを一目見て、成程これはSMなんだなと分かりました。明らかに主人公を見下している、もしくは見守っている目線をしているヒロインが2人こちらに手を向けております。本能的に危ない、勘の良い人はもしかしたらこの段階で約束された結末を予測できるのかも知れません。そして、その結末に向けて自分から突っ込んでいく人は間違いなくMです。この作品は、全てのM属性の人に是非プレイして頂きたい作品です。
切っ掛けは、ほんの些細ないたずら心でした。主人公である秋野泰夫(あきのやすお)は、それなりに顔立ちの良い大学二年生です。成績は優秀で、友だちである村上や密かに恋心を抱いている真中雫(まなかしずく)などの同級生に囲まれながら充実した大学生活を送っておりました。ですが、この泰夫はとんでもない性癖を持っておりました。それは自分がオナニーしている姿を人に見せつけたいという物です。まあ、十人いれば十人分の性癖があるのだろうとは思います。ですが泰夫はその性癖を実行していたんですね。自宅のアパートから無差別にオナニーを見せつけるのは純粋に犯罪行為、そのスリルと興奮が泰夫を高ぶらせておりました。そんな泰夫に、いよいよ天罰が下る時が来ました。いや、もしかしたらこれは天罰なのではなく天国への入り口だったのかも知れません。一瞬で変わってしまった日常、そして濃厚なSMプレイの日々が幕を開けるのです。
この作品は恋愛シミュレーションであり、ジャンルは「純愛SMハートフルコメディ」となっております。SMなのはタイトルを見てすぐ分かりますが、加えて純愛でありハートフルでありコメディと書いております。最後までプレイして、この作品は本当にこのジャンル名に違える事無く全ての要素を内包している事が分かりました。逆に、純愛やハートフルという言葉の定義を覆されたとも言えるかも知れません。SMは別に特別な性癖ではなく誰もがそれなりに持っている物です。そしてお互いがマッチングすれば別に悪い事でも嫌な事でもありません。傍から見たら理解できない行為でも、本人たちが納得しているのであればそれで良いのではないか。そんな風に少し思ってしまいました。かなり濃厚なプレイが展開されます。そこまでやるのかと思う場面もあると思います。そんな数々のプレイの先に待っている物を、是非見届けてみて下さい。
背景描写やBGMはフリー素材をメインに使用しております。特にBGMはその時の主人公や場の雰囲気を良く表現しておりました。面白いのが、同じ様なSMプレイでも前半は緊迫したBGMを使用しているのに後半はコメディ調のBGMを使用しているのです。ですがその理由は今の私にはわかる気がします。きっと、プレイヤーも登場人物達の異常な性癖に慣れてくるんでしょうね。そうなってくると不思議と彼らのSMプレイがコメディに思えてしまいます。BGMの雰囲気に違和感を感じなくなった時、あなたももしかしたらM属性に侵されてしまっているのかも知れません。システム周りはティラノビルダーを使用している事もありちょっとぎこちなかったですね。既読スキップは効きませんでしたし、バックログも僅かしかありませんでしたし、そもそもスキップも遅かったですからね。あまり快適さは期待しないほうが良いかも知れません。
プレイ時間は私で7時間15分程度でした。選択肢があり、複数のエンディングが用意されております。平均的な同人ビジュアルノベルと比較して割と長めのプレイ時間となっております。そして、このプレイ時間の殆どをSMプレイが占めております。正直、始めはその強烈さに長時間プレイし続ける事が大変でした。ですが、少しずつ慣れていってそれに合わせて登場人物のキャラクターが見えていってそこからは最後まで連続でプレイし続ける事が出来ました。なるほど、これがSMの真理なんだなと唸ってしまいました。この作品でM属性に目覚めるかどうかは分かりませんが、少なくとも一つの指標になる事は間違いないと思います。この作品のシチュエーションで興奮するかいなか、是非確かめてみては如何でしょうか。凄かったです。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
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<いや〜慣れって怖いですね。プレイ開始時に震えていた自分を返してください。>
正直言いまして、自分にとってはかなり辛かったです。何が辛いって、軽い気持ちで変態行為をしていた主人公泰夫に対してあの仕打ちはあんまりなのではないかと思ったわけです。自分が勝手に振る舞うだけでならまだしも、彼女に迷惑を掛けたり店員に不快な思いをさせたり、本当に怖くなりました。ですが、それ以上にヒロインの本当の姿に恐怖する事になるとは思っても見ませんでした。
違和感を持ったのは雫とファミレスに行った時でした。この時点で既に泰夫のM属性は開花しつつありましたのでこのまま勝手に行ってくれと思ってましたが、一緒に付いていった普通の箱入り娘だと思っていた雫の様子が何かおかしかったんです。お子様ランチを頼み、店員におっぱいミルクとか言い出したら普通は絶交です。しかも自分の事を雫ママなんて言って、変態を通り越して動物を見る目になってもおかしくありません。それなのに雫は離れませんでした。離れるどころか「今日の事は全部忘れよう!」と言ってまた明日から普通の関係を築いてくれました。泰夫にとっては天使なのでしょうが、私には狂気に思えました。楓様以上の恐怖に思えました。そしてその予感は的中する事になりました。
私、この作品の最高のエンディングは「雫 赤ちゃんEND」だと思っております。ネタバレ無しでも書きましたが、この作品は「純愛SMハートフルコメディ」です。その名の通り、基本的にどのエンディングもSMをベースとしながらお互いに理解し愛し合うものばかりでした。ですが、この赤ちゃんENDのみ愛の種類が違っていたのです。それは家族愛、しかも母親と赤ちゃんの純粋無垢な愛情でした。泰夫にも20年近くの人生経験があった訳です。そして泰夫のM属性もそんな20年の人生の過程の中で熟成された物です。ほとんどのエンディングはそのM属性を完成させたものばかりでしたが、まさかその20年を全て無に帰してしまうものがあるとは思いませんでした。
秋野君幼児化計画、それは秋野泰夫という人間を壊しリセットするものでした。完全に秋野泰夫である必要性を無くしたのです。そんな泰夫を母親としてずっと見守り続けたい、この雫の姿こそ一番の狂気だと思いましたね。どんなに泰夫が迷惑を掛けても決して見捨てない、母親として然りそして愛情を与える、何故雫はこんな性癖を持ってしまったのでしょう。そして少しでも赤ちゃんになり切れていない泰夫に対して辛辣でした。「赤ちゃんになりきれていないからダメ!」「赤ちゃんって恥ずかしいって気持ちは無いの!」これを本気で言ってるのですから、泰夫にとっては恐怖と同時に諦めと人生に対する決断が必要だったんだと思います。初恋の相手が母親になるなんて、夢にも思わなかったでしょうね。まあ、そんな事を悩んでいた泰夫はもういません。そこにいるのは、1歳になった赤ちゃんなのですから。
後はやはりメインヒロインの楓様がカッコ良くて可愛かったですね。雫の狂気が尖っていたからこそ逆に楓様のデレが効きました。ハッピーエンド直前のエッチモードとイチャイチャモードとか、普通に羨ましいって思いましたからね。あそこまで身も心も一人の女性を好きになれる泰夫も、同時に羨ましいと思いました。それでもやっぱり楓様は楓様でした。「旦那の性癖に応えてあげるのは嫁の務め」とか言いながらのあのSっぷりに安心してしまいましたからね。泰夫も「いつもの暴力、いつもの呼び方、いつもの罵声」と安心してましたね。もうこの2人はこれで良いのかも知れません。夫婦としての愛の一つの到達点を見させて頂きました。
この作品のプレイ時間が長い理由は、やはりこれだけ強烈なSMなのですからプレイヤーが慣れるまで時間が必要だったからなのだと思います。どんなに強烈なSMでも同じものを見せつけられた慣れてしまう。始めは厳しいと思っていた行為もその後更に強烈な行為を見てしまったら色あせてしまう、そんなものの繰り返しが私たちの価値観を変えてしまうのかも知れません。いや〜慣れって怖いですね。それでも雫ママのキャラクターには慣れそうにありませんが。久しぶりに力の入った作品を見させて頂きました。お見事でした。
P.S. ちなみに個人的に一番好きなのは翠さんです。あの眠たそうな声が溜まりません。