M.M クロスメモリーズ




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
4 4 2 55 2〜3 2018/4/12
作品ページ(なし) サークルページ(なし)



<折角の魅力的な世界観やキャラクターが、システムの酷さで台無しになってしまってます。>

 この「クロスメモリーズ」という作品は、同人サークルである「REBEL WORLD」で制作されたビジュアルノベルです。REBEL WORLDさんの作品をプレイしたのは今作が初めてでして、C93にて同人ゲームの島サークルを周っているときにたまたま手に取りました。夕焼雲が浮かぶ空を見つめる6人の後ろ姿という構図が素直に目を引き、裏を見ればジャンルはSFとの事です。まさに自分の好物だなという第一印象を持ちまして、楽しみにプレイ開始しました。

 主人公である桜田裕は、幼いころの記憶を失っておりました。ですがその事は特に気にも留めず、幼馴染である天草亜紀やクラスメイトの蓮見沙耶と普通の学生生活を送っておりました。裕にはお気に入りの場所がありました。それはかつて安土桃山時代、織田信長が栄華を誇った安土城があった小高い丘です。そんな丘の中に、立ち入り禁止の見知らぬ小屋がありました。普段であればそんなところに入らない裕ですが、この時は何か胸騒ぎを覚えておりました。意を決して小屋の中に入ると、そこにあるのは謎の拷問道具。そんな非現実的な物の前にたじろぐ間もなく、意識を失ってしまった裕。目が覚めたら、目の前には何故かあるはずのない安土城があったのです。裕はタイムスリップしてしまったのでしょうか?それともパラレルワールドに行ってしまったのでしょうか?2つの舞台を行き来する中で、この世界の謎に迫っていくのです。

 この作品の魅力は登場人物のキャラクターにあると思っております。主人公である裕はどこかパッとしない印象ですが、一度決めたら折れない覚悟を持っており主人公らしいです。ヒロインである亜紀をはじめとした女の子は皆属性が様々で、是非お気に入りの女の子とのルートを目指してみて下さい。そして男キャラクターも重要な位置を占めておりまた魅力的です。そんな主人公を含めた6人の姿が、このパッケージに映っている6人でもあります。友情を感じるこの後ろ姿はどんなシーンなのか、それを想像しながら読み進めると面白いかも知れません。

 ですが、この作品には致命的な欠点があります。それはシステム周り全般です。残念ですが、酷いとしか言えない仕様となっております。具体的には、

・強制的に全画面になる
・既読スキップがない
・文字スクロールが遅い
・キーボード操作を受け付けない
・誤字が多い
・立ち絵が重複する
・効果音が鳴り止むべきタイミングで鳴り止まない
・一定のプレイ時間で強制終了する
・アプリを終了するとセーブデータが保存されていない

といった感じです。何度も途中で投げようかと思いましたが、それはそれでしゃくでしたので最後までやり遂げました。折角魅力的なキャラクターに興味深い設定となっているのに、非常に勿体ないと思いました。これではとても最後までプレイしてやろうという気になりませんね。それでも最後まで物語を読みたいと思った方は、その辺りを覚悟して下さい。

 プレイ時間は私で2時間30分掛かりました。この作品は選択肢の数も多く、それ程すんなりと分岐してくれませんので何度もトライ&エラーする事になると思います。それなのに既読スキップがなく肝心のセーブデータが消えてしまいましたからね。私は一度起動して一度もアプリを落とさず最後までプレイしました。2時間30分ですので、休みの日などに一気にプレイする覚悟が必要かと思います。正直、ここまでネガティブな事を書いたのも久しぶりです。ですが、昨今ゲームエンジンが発達し多様化している中でこの出来栄えは流石に厳しいと思いました。可能であれば是非リメイクして欲しいと思います。そんな作品です。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<長い時間を掛けてたどり着いた6人の友情。その後ろ姿は時空を超えて繋がり続けるんですね。>

 ネタバレ無しであそこまでネガティブな事を書いておきながら、果たしてプレイし終わってこのネタバレありのレビューを見ている人は何人いるのでしょうか。それでも、クロスする世界観とそれを融合したシナリオは見どころでしたので後半は一気に最後まで読み更けてました。友情の大切さを訴えたシナリオは、確かにサークルさんが伝えたい事を表現していると思いました。

 振り返ってみれば、裕はかなりの時間を歩いている事が分かります。12年前に凛と出会うところから始まり、再び凛と再会したのにも拘らず今度はその凛を失ってしまいます。あれだけ仲間の力を借りたのに、運命は変えられませんでした。そしてそれは亜紀との人生を選んだルートでも同様でした。この時は秘宝の力を使って何度も何度も世界を繰り返してましたからね。きっとプレイヤーの想像以上にループしていたのだと思います。それでも亜紀を救う事が出来ませんでした。裕の歩んだ人生は、まさに茨の道そのものでした。

 ですが、そんな茨の道を歩んだ軌跡は確かに裕の中で意味を持っておりました。凛と亜紀の悲劇を経験した後に解放されるCROSS STARTルート、2つの世界が融合し崩壊してしまうルートを救ったのはやはり仲間の友情と2人への愛でした。何度も選択肢を選び、何度も悲劇を目の当たりにしてきましたが、だからこそ目の前の仲間が本当に信じれる存在であるという事、そして2人への愛は本物であるという事を確信しておりました。そんな6人の前に、織田軍もZERも勝てるはずがありませんね。物語最後、裕は秘宝を壊す決意をしました。秘宝を壊せば、二度と凛たちと会えなくなります。でも、そんな事はありませんね。作中でも言ってましたが、見えにくくなっているだけですぐ傍にちゃんといるのですから。

 最後のスチルでありパッケージの表紙にもなっている6人が夕焼けを見ているシーン、まさかこれが全て終わった後のシーンだとは思いませんでした。ここにいる6人は同じ場所にいる訳ではないんですね。ですが見てみて下さい。パッと見て決してそんな事実は感じませんね。これが6人の友情の証、その事にたどり着くまで長い時間が掛かりました。そんな、少し切なくて甘酸っぱいシナリオを味合わせて頂きました。ネタバレ無しでも書きましたが、願わくば是非リメイクして再プレイしてみたいですね。ありがとうございました。


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