M.M BRADLEY
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
4 | 7 | - | 65 | 〜1 | 2020/11/26 |
作品ページ(なし) | サークルページ(Twitter) |
<個人的に、ミステリーは難易度はともかく答えは提示されるものだと思っております。>
この「BRADLEY」はフリーゲームを制作されている「柘榴雨」氏が制作されたビジュアルノベルです。氏の作品をプレイしたのは本作が初めてです。プレイする切っ掛けですが、私のHPで公募している「プレイして欲しいビジュアルノベル」でリクエストがあった事です。元々氏とはTwitterでフォロワーだったのですが、作品をプレイしてはいませんでした。今回リクエストがあった事で勿論プレイしてみようと思ったのですが、調べてみましたらこのBRADLEYは2019年の作品でありそこから現在まで更に3作品を制作されている様子でした。この短時間にこれだけの作品をリリースできるバイタリティに素直に感心し、そんな氏の処女作という事でどんな作品なんだろうと気になってきました。BRADLEYとは一般的には人物の名前となっております。タイトル画面でも白衣を着た男性の姿が映し出されておりました。彼がBRADLEYなのでしょうか、そしてどのような物語が紡がれるのでしょうか。楽しみにプレイし始めました。
始めに断っておきますが、この作品は公式HPにてあらすじを読むと読まないとで全く印象が変わります。何故なら、作中では殆どの情報を開示していないからです。私自身、実はあらすじを見ずにいきなりプレイ開始する頻度が多かったりします。その為、今作はあらすじを見なかった事で人物関係や舞台背景を殆ど理解できないまま一周してしまいました。これはマズいと思いちゃんと公式HPであらすじを確認し、ある程度のバックグラウンドを理解してから再プレイしました。ですが、それでもやはり分からないものは分かりませんでした。この作品はミステリーでありサスペンスとなっております。ミステリーとは、いわゆる推理小説と呼ばれているジャンルです。そしてサスペンスとは、不安や緊張といった要素が続くジャンルです。プレイヤーは、非常に限られた情報からこの作品が言わんとしている事を不安と緊張の中で解き明かさなかければ行けません。不思議な雰囲気の世界へと足を踏み入れる事になるのです。
そして、この作品は非常に短いです。プレイ時間は私で25分、加えてエンディングが2つありますのでそれぞれのルートで10〜15分となります。あっという間に終わってしまいますので、何も考えないと訳が分からないままになってしまいます。結果として、同じシナリオを何周もする事になると思います。それでも、恐らくプレイした人の数だけこの作品の解釈が生まれると思います。私は、ミステリーとは推理小説ですので難易度に差はあれ答えは1つであって欲しいと思っております。残念ながら、想像の余地が沢山ある作品ですので純粋なミステリーかと問われれば首を傾げてしまいます。サスペンスではあると思いますけどね。そういう意味で人によってはストレスが溜まるかも知れませんが、元が短いので是非何周かしてみて下さい。背景描写などはこの作品の魅力でありますので、そんな雰囲気を感じながら一文一文読んでみて下さい。
選択肢も1つしかありません。それがそのまま2つのエンディングへの分岐となります。そして、その選択肢も初見では意味が分からず選ぶ事になると思います。いや、2周目3周目でも意味が分からないかも知れませんね。選択肢に意味を持たせる事が出来るのは、プレイヤーであるあなたの意思次第かも知れません。折角なので、一文一文じっくりと目を皿の様にして読むのもありかも知れませんね。何しろ非常に短いのですから。もしかしたら、このレビュー全体の文量よりも短いかも知れません。色々な作品をプレイしてきましたが、ここまで不思議で答えのない作品も無かったかも知れませんね。こんな感じで、プレイヤーを悩ませ議論させる事こそがもしかしたらこの作品の狙いだったのかも知れません。これ以上書くとネタバレになってしまいますので、ここから先は自分の目で確かめてみて下さい。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
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<個人的な話ですが、殺人者よりも性犯罪者の方が生理的に受け付けなかったりします。>
ネタバレ無しでも書きましたが、本当に不思議な雰囲気を持つ作品でした。BRADLEYが担当していた少女である■■■、ですがどうやらそんな人物がいるかどうかも怪しく思ってしまいます。そもそも、■■■が彼女だとすると色々と矛盾してしまいます。という感じで一週目で全く訳分からない状況になってしまいました。そしてあらすじを見て更に訳分からなくなってしまいました。それでも、自分なりの答えを記してみようと思います。
思うに、■■■という人物は現実には存在しないのだと思います。存在しているのは、ただ性犯罪を行ったBRADLEYという人物だけだと思います。それは、周りの人がBRADLEYの事をロリコン野郎と言っている事と符合します。恐らく、BRADLEYはロリコンで性犯罪を実際にしたのだと思います。■■■はそんなBRADLEYが生み出した別の人格、それでもようやく治療とカウンセリングが終わりを迎え最後のテストとなったのだろうと思っております。語れるのは過去の自分、そして自分に優しくしてくれた女の子の姿、彼女が差し出してくれたオレンジ味のキャンディーは、BRADLEYにとって愛情を感じる貴重な掛け替えのないものだったのかも知れません。
このオレンジ色のキャンディーを受け取るか受け取らないかが、そのままTRUE ENDとANOTHER ENDの分かれ道となりました。オレンジ色のキャンディーを受け取ったかつてのBRADLEYは、その愛情に依存しそのまま少女をレイプしてしまいました。それでも、BRADLEYにとっては唯一の愛情を感じる事が出来るものでした。だからこそ、このオレンジ色のキャンディーを断れるかどうかが最後のテストだったのだろうと思っております。作中にて、人は変わる事が出来るというフレーズが何度も登場しました。そして、それに対してあなたは全然変わってないという返答がありました。さて、その答えはどちらだったのでしょうか。キャンディーを受け取ったルート、再びBRADLEYは名前の知らない少女と出会う事になります。そのまますんなりと終わるかと思ったら何かを割く音、ああこれはきっとまたレイプしたんだろうなと思ってしまいました。
そして、キャンディーを受け取らなかった方では第三者の口からBRADLEYの事が語られる事になります。彼はロリコン野郎、それはきっとそうなのでしょう。ですが、同時に彼は模範囚でもあったそうです。これは、BRADLEYが変わろうと努力していた表れなんだろうと思いました。性犯罪は悪い事です。だからこそ、悪い事を悪い事を認め二度と同じ事をしないと世の中に指し示す必要があるのです。今回BRADLEYはキャンディーを受け取りませんでした。過去の自分と違う行動を取る事が出来たのです。だからこそ、最後に「人は、変われるからな」というセリフがあったのだと思います。これはBRADLEYが変わる事が出来た何よりの証拠、これもまた一つのエンディングでした。
正直言えば、キャンディーを受け取った方がANOTHER ENDでキャンディーを受け取らなかった方がTRUE ENDだと思いました。ですがそうではないという事は、作者的にBRADLEYは変われなかった方が真実だというメッセージなんだろうなと思います。HAPPY ENDやBAD ENDではありません、TRUE ENDかANOTHER ENDですからね。個人的な話ですが、殺人者よりも性犯罪者の方が生理的に受け付けなかったりします。何故なら、殺人は更生出来そうですけど性癖は更生も何もないと思っているからです。ロリコンなのはその人の変えられない所です。何故ならそれは性癖なのですから。病気でも何でもなくその人の性癖、つまり再び性犯罪を犯すかもしれないのです。この作品は、そんな力強い残酷なメッセージを伝えたかったのかも知れません。性癖は変わらない、それが真実なんだろうなと思わせてくれました。ありがとうございました。