M.M BOYS IN MY HOUSE




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 6 - 75 3〜4 2017/4/30
作品ページ サークルページ



<日常の平坦さとその掛け替えのなさを、丁寧に描いた毎日の描写とテキストから感じて下さい。>

 この「BOYS IN MY HOUSE」という作品は同名の同人サークルである「Boys in my house」で制作されたビジュアルノベルです。Boys in my houseさんは主にフリーゲームを制作されているサークルさんで、Freem!などで作品を公開しております。Boys in my houseさんを知った切っ掛けは、サークルの管理人であるdeli氏が私のツイートを何度かリツイートやいいねしてくれた事でした。その後調べてみたら上記のフリーゲームを作られているという事ですので、日頃のお礼も込めて今回プレイさせて頂きました。

 主人公である錦山咲(名前は変更可)は25歳の大学院生です。博士過程後期の研究生として日々実験と論文作成の日々を送っております。そんな咲は同級生の美琴とルームシェアをしているのですが、美琴が短期留学で海外に行ってしまった事で1人で住むには広い部屋を持て余しておりました。そんな時、突然目の前に2人の男の子が現れました。それは比喩でもなんでもなく、本当に目の前に現れたのです。2人の名前はカイトとフレン。彼らは何と今から100年後の地球からやって来ました。そして100年後の地球は地球外生命体からの侵略で荒廃しているとの事。突然の出来事に動揺する咲と男の子達、そんな3人のドタバタしながらも賑やかな4週間限定の日常生活が幕を開けるのです。

 この作品ですが、正直あらすじ上のネタバレ要素は殆どありません。突然1人暮らしの大学院生の目の前に2人の男の子がやってきた。そして期間限定の同棲生活が始まった。そして4週間後には未来に帰ってしまう。本当にこれだけです。勿論シナリオの浮き沈みやキャラクターの細やかなパーソナリティ表現はありますしそれをここで書くことは出来ません。それでもあらすじとして同棲生活が始まり同棲生活が終わるという事は約束されているのです。ではこの作品の魅力は何なのでしょうか?それが、上でも書いたドタバタしながらも賑やかな日常生活の1コマ1コマです。

 この作品の最大の特徴として4週間の同棲生活を1日たりとも飛ばすことなく毎日描いている点があります。朝目が覚めて朝ごはん食べて、平日は大学院で研究生活を送って休日は3人で遊んだり買い物をして、夜は皆で夕御飯を食べて談笑する。そんな当たり前の日常がずっと平坦に描かれております。それでも現代社会は100年後の未来から来た2人にとって不慣れな事ばかりです。そんな彼らの少しずつの成長の姿も感じられ、平坦な日常の中で確かに時間の経過を感じる事が出来ます。正直、プレイ中はその平坦さに退屈するかも知れません。早く結論を見たい、そんな気持ちになるかもしれません。ですが、最後までプレイして振り返ったとき、その4週間の軌跡はかけがえのないものとなっているはずです。

 加えて言えば、この作品には選択肢がほぼ必ず1日1つ以上あります。そしてほとんどの選択肢は分岐に意味を与えない選択肢ばかりです。何が言いたいのかといいますと、プレイヤーもまたこの平坦な日常のメンバーとして組み込まれており、彼らと共に期間限定の同棲生活を楽しむことが出来るのです。勿論分岐に関係する選択肢もあります。ですがその選択肢はマウスポインタをあてがったときの効果音が違っておりますので誰でも気付く事が出来ます。4週間ですので大凡30個の選択肢があります。そしてそのどれを選んでも正解・不正解がありません。大切なのは、この平坦な同棲生活を享受してどれだけ素直に選択肢を選べるかだと思っております。

 3人の年頃の男女の同棲生活です。勿論友情だけでは終わらず恋に発展する事もあるでしょう。特に恋に発展せず友情のみで終わるかも知れません。それは皆さんが選択肢を選んでいく中で確認してみてください。ですが忘れていけない事は、この同棲生活は4週間の期間限定であるという事です。たとえ一緒になりたいと思っても、4週間後には離れ離れにならなければいけない運命なのです。出会ったばかりの時の3人は、4週間後のお別れの時に何を思うのでしょうか?そして画面の前にいるあなたは何を思うでしょうか?この作品は、日常の平坦さとその掛け替えのなさを描いた作品です。是非1日1日を大切にして、噛み締めながらテキストを読み進めていってほしいと思います。

 プレイ時間は私で3時間20分でした。一周目は1時間30分で終わり、その後全ての選択肢と分岐を検証してトータル3時間20分となりました。上でも書きましたが30個ある選択肢の殆どは分岐に影響を与えないものです。その為重複しているテキストも多いですので未読のテキストを埋めることはそれ程大変な事ではありません。何度も書きますが、大切なのは分岐を検証することでも未読テキストを埋める事でもありません。平坦な日常の確かな軌跡を感じる事です。是非この作品の中から、あなたにとって大切な何かを見つけて下さい。それが見つかったとき、愛しさに似た何かを感じる事が出来ると思います。オススメです。


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