M.M 転生してない悪役令嬢はまだ運命を知らない




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
3 6 - 62 〜1 2020/3/15
作品ページ サークルページ
飛石企画crAsm



<主人公のノーラを、悪役令嬢にするのもしないのも全てあなた次第です。>

 この「転生してない悪役令嬢はまだ運命を知らない(以下悪役令嬢)」という作品は同人サークルである「飛石企画」と「crAsm」の合同で制作されたビジュアルノベルです。飛石企画さんとcrAsmさんは、共にフリーの乙女ゲームを作成されております。飛石企画さんの作品では「花は桜木 人は武士」、crAsmさんの作品では「+ 冬のぬくもり +」「TEAD」「GreenGrass」をプレイさせて頂きました。当時はまだ私自身乙女ゲームは殆どプレイしておらず、その醍醐味と言いますか魅力を理解しておりませんでした。そんな私に、乙女ゲームらしさと言いますか雰囲気を教えて頂いた代表サークルさんが飛石企画さんでありcrAsmさんです。乙女ゲームは、他のビジュアルノベルと比較して綿密に練られた登場人物設定が印象的です。今回の悪役令嬢もそんな魅力的な登場人物に逢えると期待しプレイ始めました。

 私自身知らなかったのですが、悪役令嬢というジャンルは「小説家になろう」などでは比較的メジャーなジャンルの様です。古くを見れば、童話「シンデレラ」の主人公シンデレラをいじめる従姉などが当たるでしょうか。それでもあくまて悪役令嬢はサブキャラクターであり、メインヒロインとなるパターンを自分は知りませんでした。ですがその分かり易いキャラクターと小説家になろうでメジャーな異世界ものは相性が良かったみたいです。悪役令嬢は、性格はともかく勢いがありますので痛快なシナリオを作るには調度良いのかも知れません。どんなキャラクターでも使い方で主役にも脇役にもすることは出来るんですね。今回はそんな悪役令嬢が主人公の物語となっております。

 主人公であるノーラはとある貴族の御令嬢です。婚約者として紹介されたのは、この国の第五王子でありイケメンでいつもキラキラしているその名もシャイン。一目惚れしたノーラですが事はそうすんなりと進みませんでした。魔法学校に入学したノーラとシャインですが、その隣にはユリアナというおっとりとした御令嬢の姿が。シャインもまんざらではない様子に、明らかに動揺を隠せないノーラ。ここから、ノーラの悪役令嬢っぷりが発揮される……かも知れません。分かり易い人物構成がどのように変化していくのか、それを決める事が出来るのはプレイヤーであるあなたです。

 構成としては選択肢を選び幾つかあるエンディングにたどり着く形式となっております。特徴としては、その選択肢がそのままノーラの性格を決めてしまう物であるという事です。状況に応じて「右に行く」「左に行く」といったものではなく、登場人物の行動に対して「許す」「許せない」といった感じですね。そういう意味で、どんなエンディングを目指したいのか狙いやすいかも知れません。悪役令嬢らしく悪役的な選択肢を選ぶのもよし、普通に利他的な選択肢を選ぶのもよし、折角なので色々と遊んでみるのが良いかも知れませんね。

 プレイ時間は私で20分程度でした。これは全てのエンディングを見るまでの時間ですので、本当あっという間に終わってしまいます。シナリオと言うよりも、要所要所に散りばめられた小ネタと登場人物のキャラクターを楽しむのが良いと思います。基本的にコメディでありギャグですので、あまり真面目に取り合わない方が良いかも知れないですね(失礼!)。上で登場人物の名前を紹介しましたが、フルネームを紹介しなかったのにはもちろん理由があります。モブキャラにも愛着がありますし、割と予想外のエンディングもありましたからね。是非隅から隅まで堪能してみて下さい。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<主人公の性格を操れる選択肢は、自分の中でかなり新鮮でした。それが故にキャラクターが掴めませんでした。>

 ネタバレ無しでも書きましたが、自分の中で割と驚きだったのはここまでハッキリと主人公の性格を操れるという事です。選択肢によっては普通に悪役令嬢にも出来ますし、少し感情の振れ幅が狭い無関心なキャラクターにも出来ました。そして、そんな性格がそのまま周りの評価とエンディングに直結しました。

 実際のところ、この作品の中で一番しょうもないのはシャインでしたけどね。唯のナルシストでしたし、浮気性でしたし、これでしたらユリアナと結ばれても遅かれ早かれ別れていたでしょうね。ユリアナも、唯の優しいだけのキャラクターではありませんでした。ちゃんと言うべきところは言う事が出来る性格でしたので、将来的にフラれるのは明らかです。正直言ってしまえば、シャインがあまりにも個性的過ぎましたのでノーラの悪役令嬢っぷりが霞んでしまう程でした。何しろ、シャインの方がよっぽど悪役なんですもの。そういう意味で、一番お気に入りのエンディングは「ラブラブ?エンド」です。ああいうどうしようもない男は、ちゃんと首輪をつけて手綱を繋いでおくことが大切ですね。

 後はモブキャラの突っ込みが割とストレートな印象でした。と言うよりも、モブキャラの突っ込みが結果として今現在のノーラの印象を示しておりました。闇属性なノーラに恐怖し、荷物を持ってくれたノーラを庇い、婚約破棄したシャインに「非・リア」と罵り、まあよくもまあここまでコロコロと自分の意見を変える事が出来るなとある意味感心してしまいました。そんなんだからモブなんですね。「ムッチャモブ」とか「モーブレイジョー」とか、思わず笑ってしまいました。そんなものなのかも知れませんね。所詮は他人事ですので、外野で適当に騒いでいるうちが調度良いのかも知れません。

 結局のところ、これが悪役令嬢なのかなと思うとちょっと「?」な感じでした。悪役令嬢だからこその没落エンドなのでしょうけど、自分で性格を選んでますので驚きがある訳でもありませんし予定調和という印象が強かったです。それよりも、モブと共にシャインをとことん貶めて、散らばっている小ネタにクスッとするのが楽しかったです。中二病エンドも筋肉エンドも楽しかったです。魅力的な登場人物ですので、是非性格と言いますか方向性が決まってからのエピソードを読んでみたいと思いました。後は、悪役令嬢についてもっと勉強しなければですね。ありがとうございました。


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