M.M あかほん! ベクトル編@とA




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
2 3 - 55 〜1 2015/10/18
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<「ベクトルとは何ぞや?」から始まる、学びの本質を教えてくれる読み物です。>

 この「あかほん! ベクトル編@とA」は同人サークルである「Chloro」で制作されたビジュアルノベルです。Chloroさんの作品では過去に「西暦2236年」をプレイした事があり、ビジュアルノベルのセンスに溢れた同人らしい内容で私の中でも非常にお気に入りのタイトルとなっております。その後Chloroさんの代表であるもきね氏と何度かお話する機会にも恵まれ、ついには聖地巡礼まで行ってしまいました。聖地巡礼を行うことで西暦2236年が生まれ舞台となった土地柄も味わうことができ、それだけ私にとってインパクトのあるタイトルであったという事なのだろうと思っております。今回レビューしている「あかほん! ベクトル編@とA」はそんなChloroさんの過去作であり、文字通りベクトルというものについて描いたビジュアルノベルとなっております。

 主人公であるシキネは苺ましまろが大好きなオタク高校生です。勉強よりもアニメやゲームが大好きなお年頃なので勿論学校の成績はお察しといったところです。そんなシキネにはスウという数学が大好きな女友達がいて、ひょんな切っ掛けからシキネはスウからベクトルを習うことになりました。クラスメイトであるシオやその妹であるチカとのドタバタを交えながらも、数学に目がないスウの情熱に押されて少しベクトルと仲良くなっていきます。

 この作品は受験対策型ノベルゲームというジャンルになっておりますが、プレイした印象としましては「ベクトルとは何ぞや?」という純粋な読み物に思えました。高校生にとってのベクトルといったらやはり数学科目の1つであり、公式を覚えて練習問題を解くだけの無味乾燥な存在であろうと思います。ですが本来ベクトルとは世の中の物理方式を効率よく表現するために生み出された言葉のようであり、本質が理解できればきっと目からウロコの面白さを体感できるはずなのです。この作品ではそんなベクトルを「一番最初から確認」する事から始めており、向きと大きさという2つの要素を持って表現することの大切さを語っております。学ぶという事で一番大切な事から始めておりますので本当の意味で非常に親切な読み物となっております。

 そして冒頭「ベクトルとは何ぞや?」から初めて徐々にその他の定理について話が進んでいきますが、その中でもChloroさんらしい工夫が随所に設けられております。まずは出来るだけ具体例を出して説明している事です。例えば向きと大きさという概念について地図を使って説明しております。これで距離と方角という考え方とリンクさせる事でベクトルを身近に感じることができます。他にも手で押し合って力の向きを体感させたり、鉛筆を転がして平面をつくったりと非常に凝った演出もあります。特に鉛筆の部分は非常に分かりやすかったですね。鉛筆1本では平面上に定まらなくても2本あればピタッと定まる。なるほど次元の説明にこんな分かりやすい方法があるとは思いませんでした。まさに目からウロコ。是非現役高校生の前で披露して欲しいと思いました。

 プレイ時間は私で40分程度掛かりました。「ベクトルとは何ぞや?」という概念をたった40分で学べるのです。これ程お得な読み物はありませんね。受験対策型ノベルゲームと言いながらガツガツ練習問題を解くわけではありませんが、ある意味ここから始めるのが本来の受験対策ですのでこのジャンル名はあながち間違ってはいなかったのかも知れません。現役受験生でなくても過去にベクトルでもやっとした全ての方に読んで貰いたいですね。きっとあなたもベクトルが好きになりますよ。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<最後の練習問題を解いてみました>

 (1) AF↑=( -1 + 2s)b↑ + (1 - s)c↑


 (2) DF↑=(-5/3 + 2s)b↑ + (1 - s)c↑


・・・合ってるかな?


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