M.M AIR




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
10 10+ 10 94 30〜40 2006/5/17
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<感動系超大作>

 おそらくギャルゲーという言葉を知っている方なら、間違いなく一度は聞いたことのあるタイトルだと思います。いわゆる「泣きゲー」の最高峰として知られている「AIR」、結果から言いますと、泣いたというより泣かせられました。

 まず評価出来る点としては、音楽の素晴らしさです。コンポーザーの「折戸信治」「戸塚まごめ」「麻枝准」ですが、もうこの方々たちは天才ですね。「AIR」の世界観を掴んでいるのは勿論なのですが、BGMの一曲一曲が驚くくらいに綺麗に仕上がっています。曲数が決して多くはないのですが、これらの綺麗な曲をゲーム中に効果的に散りばめることで、まさに「音楽の持つ魅力」というものが十二分に生きてきます。「AIR」をやった人のみならず、やってない人も是非サウンドトラックの購入を推奨します。

 次に評価出来る点として、演出の良さです。シナリオの特性上、どのような演出かは言えませんが、まさにプレイヤーを「AIRの世界に引き込む」ための演出に仕上がっています。特に中盤、物語の核に当る部分での演出を目の当たりにして、一分程度画面を見つめたままフリーズしてしまいました。それからは一気にクライマックスまで「AIR」を進めてしまいました。それだけでなく、小さな効果音一つ取ってもリアリティがあり、本当に良い雰囲気を作っています。

 そしてシナリオですが、「感動」の一言で済ませることが出来ると思います。全体を通してみて改めて思いますと、正直言ってかなり長いシナリオです。そして、シナリオの内容を自分が完全に把握しているかと言いますと、把握しきれている自信はありません。しかし、そういった弱冠の不安要素を全く気にしなくさせるようなシナリオです。まさに「泣け」と言わんばかりのシナリオ、感動を味わいたいのなら文句なくオススメします。

 ただ、そんな「AIR」ですが弱冠気になった点がありました。その一つは「選択肢のややこしさ」です。一見シナリオの分岐とはあまり関係ないのではといった部分でも、実はそれが原因でバッドエンドに行ってしまうといったケースが多々あります。そして、このゲームにおいてそういった「選択肢の難しさ」といった要素はあきらかにマイナスにしか働かないと思います。どこかの攻略サイトを見て、真っ直ぐに正規のシナリオに突入しても全然問題ないのではないかと思います。そんなことをしても誰もあなたを責めませんから。

 とはいえ、そんな選択肢の難しさを全く忘れさせてくれるようなシナリオです。この世に生を受けたのなら、死ぬ前に必ずやりましょう。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<1000年の思い>

 私がこの「AIR」というシナリオで自分が最も感動したことは、「柳也」と「裏葉」の思いが「神奈」に降りかかった途方も無い運命と不運に打ち勝ったというところです。

 「翼人」のもつ人知を超えた強大な力は本来人間の手に余る物であり、それに立ち向かおうとする人間を尽く不幸にする物ですが、柳也と裏葉はそれに果敢に対抗しました。結果、柳也は自分の寿命を著しく縮めることとなり、二人は二度と神奈と再会することはありませんでしたが、自分たちの意思を子孫に受け継ぎ、翼人と人間の途方も無いイタチゴッコを「スタート」させたのです。

 そして柳也が死んでからちょうど1000年、積もりに積もった法術士の思いを「往人」が開放することによって、いよいよこの永遠に続くかと思われたイタチゴッコにピリオドが打たれました。そもそも神奈が転生出来ない理由は、神奈の持つ記憶を人間が引き継げないからです。しかし、これを1000年分の法術士の力で引き継ぎを可能にしたのです。これによって神奈は解放されましたが、多くの代償を払うことになりました。それが神奈の生まれ変わりの人間とその時代の法術士です。「往人」と「美鈴」はそのほんの一例に過ぎず、「1000年分の世代の数」だけこのような悲劇が繰り返されてきたのです。しかし、もうこのような悲劇が起こることはありません。最後の犠牲者となった美鈴がこのイタチゴッコを「ゴール」へと導いたからです。

 正直一番最後の二人の少年少女についてですが、どのように解釈すればいいか私の中でも答えが見つかっていません。今まで人間を見守ってきた翼人の現代の姿なのか、あるいは何かの象徴なのかは分かりませんが、彼らの言う「さようなら」という言葉には、少なくとも後ろ向きな気持ちは含まれていません。新しい未来への一歩として、これまでの記憶に「さようなら」と告げたのかもしれません。

 ちなみに、世の中にはこの難解な「AIR」というシナリオを完全に解説しているサイトが幾つかあるかと思います。私のレビューはあくまで最も感動したことについて簡単に考察したものなので、より詳しく知りたい方はそういったサイトに行くことをオススメしますよ。私もまだまだ読み込みが足りませんのでね。


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