M.M 愛があればなんとかなるような気がする




 
シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 7 - 81 3〜4 2022/5/8
作品ページ(R-18注意) サークルページ(R-18注意)
体験版
エロゲと饗



<とても濃密で尊い関係性を見る事が出来ます。愛に溢れた物語をお楽しみください。>

 この「愛があればなんとかなるような気がする」は、同人ゲームサークルである「Temp’s Cafe」で制作されたビジュアルノベルです。Temp’s Cafeさんの作品をプレイしたのは今作が初めてです。切っ掛けですが、私とフォロワーである倉下さんで企画している「crAsM.M ビジュアルノベルオンリー」に御参加頂いたい事です。過去のレビューでも書いておりますが、昨今コロナ禍でオフラインのイベントに向かい風となっていると感じオフラインのイベントを開催しようと思い立ちました。何よりも、まだ自分の知らない作品やサークルさんにお逢いしたいと思っており一定の成果を上げる事が出来ていると感じております。Temp’s Cafeさんもそんな偶然で出会えたサークルさんであり、オリジナルの成人向けBLゲームを制作しているという事で男である自分では中々たどり着けなかったと考えればとても嬉しい出会いだと思っております。

 主人公である優月(ゆづき)は、この春から新しい土地で生活を始めました。優月の隣には朝陽(あさひ)という恋人がいました。2人は男性同士のカップルであり、この日の為に様々な苦労を乗り越えてきたのです。2人は相思相愛であり、どこから見てもラブラブな関係です。この作品は、そんな優月と朝陽が同棲生活を始めたところから始まります。当たり前の日常を描いた作品ではありますが、その当たり前がどれほど尊いものなのかを感じる事が出来る事でしょう。何よりもタイトルが「愛があればなんとかなるような気がする」です。どれほどの純愛が待っているのか楽しみにプレイし始めました。

 この作品の魅力は、とにかく優月と朝陽の関係性にあります。あらすじから2人はラブラブなカップルと紹介されておりますが、本当に始めから終わりまで愛し愛される関係を貫く通してくれます。体調が悪そうであれば気遣い、家に帰ってくるのが遅くなれば心配し、そして隙あればHな事をしまくります。本当、誰が見ても羨ましいと思える間柄です。あまりにもラブラブでしたので、私も少し胸やけ気味になってしまいました。また、シナリオですが2人のラブラブな日常と馴れ初めを交互に描く構成となっております。この組み立て方が非常に上手で、ともすればプレイヤーを置いてけぼりにしてしまいそうな間柄を丁寧に保管してくれます。直球のラブラブに戸惑うのは、せいぜい最初の30分位だと思います。後は、まるで子供を見守る親の様な目線になる事と思います。これだけ直球な純愛、久しぶりに見た気がします。

 その他の要素として、背景はフリー素材や別のサークルさんが頒布している物を使用しております。同人ゲームを多数こなしている方であれば多少見たことがある物があると思いますが、割と新しめの素材をしている感じがしました。少なくとも違和感を覚えるといった事はありません。BGMもフリー素材ではありますが、使いどころが上手であり切り替え頻度が多いのでスクリプトでよく調整されていると思いました。そして、BLゲームという事で2人のどちらにも声が付いております。2人の性格が全く違うのですが、それが声を聞くだけですぐに感じる事が出来ます。その他モブキャラにも声があり、こちらにも力を入れている様子が伝わりました。システム周りは、Light.vnを使っているという事で動きがスムーズでした。基本的な機能が揃っており、操作方がゲーム内で確認できますので困る事は無いと思います。

 プレイ時間は私で3時間10分くらいでした。シナリオを分岐させる選択肢が存在し、それによって複数のエンディングがあります。あくまで分岐の為の選択肢ですので、ルートに迷う事は無いと思います。冒頭お話しましたが、この作品は2人の男性パートナーのラブラブな日常を描いた作品となっております。是非、愛に溢れた時間を一緒に過ごして頂ければと思います。最後までプレイして、きっと自分が考えている愛と彼ら2人の間にある愛について考えてしまう事と思います。とても純粋で尊いものを見させて頂きました。ありがとうございました。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<愛する人と一緒に死ねる、これ以上に幸せなことがあるでしょうか?>

 最後までプレイして、ここまで相思相愛になれる関係が本当に羨ましいと思いました。いつも気にかけるのは相手の事、自分よりも常にパートナーの事を優先する姿に羨ましさを覚えました。愛があればなんでもできる、これは本当かも知れませんね。

 例えばの話ですけど、優月と朝陽が2人とも家庭環境に恵まれて友達も沢山いたら出会っていなかったのかも知れません。優月は両親の期待に応えられず家族全員から疎外されて居場所がありませんでした。朝陽はそもそも両親が他界しており祖父母の元で窮屈な生活をしておりました。周りに心から頼れる人がいなく、常に孤独と不安に押し潰されそうになってました。だからこそ、お互いシンパシーを感じて惹かれ合ったのかも知れません。ですけど、この2人の関係はそれだけではない事が明らかになりました。寂しさを埋めるだけを相手に求めるのであれば、ここまで相手の為に行動する事は無いと思います。優月は朝陽と同棲する為に100万円を貯めました。朝陽は優月が苦しんでいる姿を見て優月の両親を殺しました。そこにあるのは相手への思いやりだけ、これは共依存ではなく愛であると思えるだけの説得力を持たせてくれました。

 正直、After以降の展開はかなり驚きました。前半だけを見て、ちょっと大変な過去をもった2人が偶然出会い運よく結ばれた話なんだなと思ってました。ですが、事態は大変深刻で優月と朝陽はお互いの為に殺人をしてしまったのです。そして、誰にも邪魔されない場所を求めて放射能で汚染されている国の立入禁止区域に入る事を決めました。この辺りの展開は、時節を考慮しており20歳の若者が考える方法として順当だと思いました。突拍子もない行動にみえて実に現実的、この辺りのバランスは見事だと思いました。何よりも、相手の為であれば確かにこの位の行動はするだろうなという説得力もありました。あのままでは、優月と朝陽は決して結ばれずそれどころかずっと親や親族に虐げられ自由の無い身でしたからね。とてもスッキリしましたし、疑問には思いませんでした。

 そして最後の時、お互いの事を思いやった2人が出した究極の結末はお互いを殺して一緒に天国へ行く事でした。ここまで絶妙なリアリティを出してきたシナリオ展開で、最後に2人はどのような行動を取るのかずっと気になってました。そして、2人お互いに殺し合おうという結論に妙な納得感を覚えました。流石だなと、これこそ純愛だなと思いました。私も常に思っているのですが、自分が一番好きな人に願う事は死ぬまで一緒に居る事です。死がふたりを分かつまでとはよく言ったもので、どんな人生を歩んでも最後には死を迎えてしまいます。この時に隣に大切な人がいてくれることが一番の幸せではないかと思うのです。そして、優月と朝陽は相思相愛です。お互いがお互いを同時に殺せば、片方だけ取り残される事は無いのです。本当、羨ましいと思いました。自分もこうなりたいと思いました。

 2人はずっと辛い人生を歩んできました。折角出会えたのに、周りが2人を関係を邪魔してきました。余計なものを排除して世の中から逃げて、最後の最後でやっと2人は本当の意味で一緒になる事が出来ました。これがハッピーエンドでなくて何だと言うのでしょうか。死んで終わるのはバッドエンドだと思う人もいるかも知れません。生きていれば何とかなると思う人もいるかも知れません。ですけど、遅かれ早かれ人は死にますからね。それがたまたま早かっただけですし、何よりも一緒に死ねたのですから幸せ以外の何物でもありません。始めから終わりまで、徹頭徹尾純愛に全振りした物語でした。これだけ突き抜けたシナリオが読めて自分も幸せでした。願わくば、2人で天国で一緒になり桜を眺めながら愛し合える事を祈っております。ありがとうございました。


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