M.M ADVの軌跡〜サウンドノベルとビジュアルノベル〜




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
2 7 - 65 1〜2 2019/1/2
作品ページ サークルページ(作品ページと同じ)



<現代でも誰もが知っている作品を、ジャンル・システム・設定などの視点から体系的に整理して説明しております。>

 この「ADVの軌跡〜サウンドノベルとビジュアルノベル〜」は同人サークルである「LEVEL PLUS」で制作されたビジュアルノベルです。LEVEL PLUSさんは現在因果律ビジュアルノベルADVである「セカイの果ての均衡者〜BALANCER〜」を制作されており、C95現在までで全8章まで発表されております。代表の高田氏とは各種即売会やイベントなどで何度もお会いした事があり、ここ最近のコミケでは売り子としても声をかけて頂いております。会う度にビジュアルノベルを含んだ話題に花が咲き、作品のみならず創作論なども含めて非常に豊富な知識とモチベーションを持っている方だなと思っております。そんな高田氏が独自の理論でADVの歴史を紹介するADVの軌跡の第二弾が今回レビューしている「ADVの軌跡〜サウンドノベルとビジュアルノベル〜」です。前回からより現代に近くなっており、この辺りになりますとプレイしている作品名も多く見かけられるのではないでしょうか。

 今作は副題として〜サウンドノベルとビジュアルノベル〜とついておりますので、チュンソフトから発売された「弟切草」の時代から始まります。これまでのコマンド式のアドベンチャーやゲームブックと呼ばれるゲーム性を持った書物などから、いよいよ物語を主軸に置いたアドベンチャーの誕生です。サウンドノベルの先駆けとなった「弟切草」が1992年、そこからサウンドノベルとビジュアルノベルの転換点と呼べる作品を紹介し、それらが何故転換点なのか、どう世の中に影響を与えたのかを体系的に説明しております。大変分かり易いテキストで、これまで曖昧だったサウンドノベルとビジュアルノベルの変遷を整理する事が出来ます。ジャンル、システム、設定など、変化していった要素を体系的に説明しておりますので、是非サウンドノベルとビジュアルノベルに触れた方に読んで頂きたいですね。

 最大の特徴は、同サークルさんで制作されている「セカイの果ての均衡者〜BALANCER〜」のキャラクターによる対話形式で説明が続いていく様子です。一人称のテキストのみでの説明でも十分なのですが、これを敢えて説明する人と教えてもらう人という構図を作る事で親しみやすくなっております。例えば、ADVの初心者が「そもそもこれってどういう事?」と説明者に質問するのです。その質問を受けて、説明者はより噛み砕いてその部分を説明してくれます。このような形で、素人にも玄人にも退屈しないプレイヤー目線の構図を作っております。他にも、キャラクターの特性を加えた小ネタやコメディシーンもあり、退屈する事はありません。是非このADVの軌跡を読み終えたら本作である「セカイの果ての均衡者〜BALANCER〜」もプレイして欲しいですね。

 最後までプレイして、恐らくサウンドノベルとビジュアルノベルについては今回のタイトルで最後になるのかなと思います。何故なら、現在のビジュアルノベルのモデルとなっているタイトルを一通り紹介したからです。具体的に言えば、「弟切草」に始まり「かまいたちの夜」、elfの「同級生」やLeafの「雫〜しずく〜」「痕〜きずあと〜」「To Heart」、TYPE-MOONの「月姫」「Fate/stay night」、07th Expansionの「ひぐらしのなく頃に」です。人によっては、もっと紹介して欲しい作品や売り上げの多い作品、思い入れのある作品があるかと思います。ですが、あくまでこの作品はADVの軌跡です。物語性のある作品ではなく歴史的転換となった作品を紹介しております。そういう視点で見れば、きっとこれ以降の作品に革新的なものは無いのだと思います。それでも、心に残る作品は沢山あります。是非皆さんだけのお気に入りの作品を見つけて頂ければいいのかなと思っております。

 プレイ時間は私で約1時間40分程度掛かりました。思ったよりも大ボリュームでした。単純な歴史や作品の紹介だけではなく、小ネタを挟んだりキャラクター同士の掛け合いがあったりと、そういった遊び心もまた魅力だと思います。私自身、初めてビジュアルノベルに触れたのは2002年に発売された「D.C. 〜ダ・カーポ〜」ですからね。まだまだADVの歴史で見れば初心者同然です。今回ADVの軌跡〜サウンドノベルとビジュアルノベル〜をプレイしてみて、勉強の為に触れなければいけない作品が沢山ある事が分かりました。是非定期的にそういったタイトルにも触れ遊んでみたいと思いました。そして、皆さんなりにサウンドノベルとビジュアルノベルの歴史を振り返ってみるのも良いと思います。例えば、恋愛シミュレーションの軌跡とか考察してみると面白いのかも知れませんね。そんな幅を感じる作品でした。ありがとうございました。


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