M.M ADVの軌跡




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
2 6 - 60 〜1 2016/7/2
作品ページ サークルページ(作品ページと同じ)



<もはや業界人なのではないかと思ってしまう程のリアルな解説と展開はありそうでなかった内容です。>

 この「ADVの軌跡」は同人サークルである「LEVEL PLUS」で制作されたビジュアルノベルです。LEVEL PLUSさんは現在因果律ビジュアルノベルADVである「セカイの果ての均衡者〜BALANCER〜」を制作されており、ここ最近の各種即売会によく参加されております。個人的には代表の高田氏と何度もお会いできる機会に恵まれ、ノベルゲーム部やおすすめ同人紹介のみなみ氏主催の同人ゲーム・オブ・ザ・イヤー、ノベルスフィア懇親会など幾つもの場面でザックバランにお話させて頂きました。作品に対する情熱もそうですが、豊富なADVの知識を持っている方であるという印象でした。そんなLEVEL PLUSさんのCOMITIA116での新作が今回レビューしているADVの軌跡であり、タイトルの通りまさにADVの教科書の様な内容でした。

 内容ですが、ADVの軌跡とあります通りADVの歴史を解説したものとなっております。解説は上でも書いたセカイの果ての均衡者〜BALANCER〜のキャラクターが会話をする形式で進められ、アホな主人公沢津拓真と素直で可愛いヒロインであるサラサ、そして同級生の君塚瑞穂というメインの登場人物の掛け合いが実に和やかでした。今回はそれに加えてサラサの同期である無口なリィスも加わり、ドタバタとした雰囲気が印象的でした。ちなみにセカイの果ての均衡者〜BALANCER〜をプレイしなくても大丈夫です。プレイしている方にとっては登場人物達の裏の設定を知っているのでそれでニヤニヤでき、プレイしていない方にとっては登場人物達の立ち位置を知ることが出来ます。いずれにしても是非本作であるセカイの果ての均衡者〜BALANCER〜をプレイして欲しいですね。

 そして今作の内容ですが、ADVの歴史という事で本当にADVの原点と呼べるタイトルから解説して頂きました。時は1975年に遡り、当時実験的に作られた「コマンド入力式」の作品が始まりだそうです。コマンド入力式とは、今のように選択肢を選ぶのではなくその選択肢に出てくる言葉そのものを直打ちして進めていきます。その場面場面で「歩く」「話す」などどのコマンドが正解かを自分で見つけなければいけなかったのです。言わば「言葉当てゲーム」。現在のようにシナリオを楽しむとか音楽を楽しむようなゲームではなかったんですね。しかも始まりは英語であり、英単語が分からなければそれでもうオシマイです。攻略本も勿論なく、クリア出来ないのが当たり前の時代でした。私も当時はまだ生まれてすらいませんでしたので、このようなゲームがある事すら知りませんでした。本当に勉強になりますね。

 とまあこのような感じで時代ごとのADVの特徴や新しいシステムなどを解説してくれます。非常に分かりやすく、どのような軌跡をたどって進化していったのかが感覚的に掴むことが出来ます。個人的に面白いなと思ったのは、ただADVの歴史を解説しただけではなくプレイヤー目線で「これって不便じゃない?」とか「難しそう〜」とかいった切り口でそこからどのように進化していったのかを解説している点でした。現在のように美しい絵があり心を揺さぶられるシナリオがあり、選択肢を基本としたシステムになるのはある意味当然の帰結である、そう納得させる誘導が絶妙で上手いと思いました。もはや業界人なのではないかと思ってしまう程のリアルな解説と展開はありそうでなかった内容です。

 プレイ時間は私で約50分程度掛かりました。上で書いたADVのスタートと言える1975年から始まり、その後いわゆるエロゲーというものが確立するまでの歴史を解説しております。ここでは書きませんが、エロゲーの歴史も思ったよりも古かったんだなと驚きましたね。私がプレイした作品で最も古いのが1996年発売のこの世の果てで恋を唄う少女YU-NOですが、これを作ったelfが誕生すらしていない時代からですからね。実際作中に登場する作品はどれもプレイした事がありません。名前だけなら知ってますけどそれだけですね。今回このADVの軌跡をプレイしてみて、どのような内容なのかとても気になりました。1つくらいは時間を見つけてプレイしたいと思いましたね。楽しかったです。


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