M.M ノナプルナイン:アウト・オブ・オーダー




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
4 8 - A 1〜2 2016/2/11
作品ページ(R-18注意) サークルページ
エロゲと饗



<この作品はコメディなのかエロゲーなのかサスペンスなのか、あらゆる可能性を模索してプレイして欲しいですね。>

 この「ノナプルナイン:アウト・オブ・オーダー」は同名の同人サークルである「ノナプルナイン」で制作された横スクロール型サスペンスADVです。ノナプルナインさんについてはC88の時から存じておりまして、全裸の女の子が横スクロールで動き回るという一度見たら必ず足を止めてしまうような意欲的な売り出しが大変印象に残っておりました。加えてヌルヌル動く2Dアニメーションや18禁要素など内容も非常に時間をかけて作られており、一般的なビジュアルノベルではない総合的なノベルゲームという印象を受けました。今回プレイしたアウト・オブ・オーダーはC89限定で発売された体験版であり、短時間でノナプルナインの世界観を味わうことが出来ます。

 時代は2036年。白昼のオフィス街で、1人の女性の頭部が突如破裂するという不気味な事件が起こりました。被害者の女性の所持品の中には石村マテリアル工業(IMI)の社員カードがあり、この事件を皮切りにIMIを巡る様々な事件が発生します。一方そんなIMIが所有しているR&Dセンタービル内において、1人の少女が目を覚まします。その少女は意識を失う前の記憶がなく全裸。唯一与えられたのは被験体:999999999という事。9が9つという事からノナプルナインと呼ばれる彼女ですが、その後奇妙な出来事が次々と彼女を襲いこの事件の真相に近づいていきます。何も情報のない状態から何とかして手がかりを見つけようとするノナプルナインちゃん。果たしてこの事件の真実、自分自身の正体は見つかるのでしょうか。そして繰り返される32階から脱出は出来るのでしょうか。

 最大の特徴は映像と音声を活用した動く演出ですね。このノナプルナインちゃん、とても素直な性格で目の前の出来事1つ1つに対して真っ直ぐに気持ちをぶつけてくれます。そしてその気持ちは多彩なモーションと表情差分、そして感動詞だけのボイスで豊かに表現されとても身近な存在として印象に残ります。またプレイヤーは観測者という立場でノナプルナインちゃんの動向を見る事になるのですが、その視点はノナプルナインちゃんの目の前にあるドローンからのカメラやマイクからの情報しか得ることができず、時に回線が切れたりドローンに不調が出たりすると画面が乱れ音声が途切れます。この辺りの再現も非常にリアルで、本当に先行き不透明な漠然とした不安感を覚えることになると思います。

 そしてノナプルナインを語る上で決して欠かす事の出来ない要素に記憶回復プログラムがあります。ノナプルナインちゃんは記憶喪失なのですが、これは脳の中にある側坐核と呼ばれる部位を刺激することで記憶を取り戻していきます。側坐核は別名快楽中枢。何が言いたいかといいますと、プレイヤーはノナプルナインちゃんの体を弄りまわして性的快感を与えなければいけないのです!そしてこのプログラムはミニゲーム形式になっておりまして、適切なタイミングで快楽を与える事で性的興奮を高め十分興奮が高まったところで絶頂させる事でクリアとなります。ゲームそのものの難易度も手頃ですが、それ以上に画面中央で触手や機械でよがり狂うノナプルナインちゃんを見れるだけで十分満足です!この作品はコメディなのかエロゲーなのかサスペンスなのか、あらゆる可能性を模索してプレイして欲しいですね。

 後は個人的にコンポーザの名前に驚きました。私、インストールしてからタイトル画面でしばらく放置していたのですが、そこで流れてくるBGMがメチャメチャ壮大でプレイ開始前から興奮しておりました。調べてみたらなんとminoriや新海誠作品のアニメーションで活動している天門氏が担当していたのです。これには驚きました。正直今のところどこを目指しているか分からないこのノナプルナインにおいて、まさか天門氏の音楽を聴けるとは思っても見ませんでした。本当、設定に驚かされ演出に驚かされ、そして音楽にまで驚かされるなんて本当に罪作りな作品です。音楽を聴くためにプレイするのも十分アリだと思います。

 プレイ時間は私で1時間35分程度掛かりました。本編ではない番外編という事もありマップ探索も殆ど一本道ですので迷う事なく最後までプレイ出来ると思います。それでも途中ヌルヌル動く演出や上で書いた記憶回復プログラム等沢山の面白みがありますので、時間に縛られず色々と散策しながらプレイしてみても良いと思います。というよりも演出のおかげて飽きることがありませんので回り道をしてもしなくてもいつの間にか終わっている事になっていると思います。非常にセンスの良い演出、謎が謎を読むシナリオ展開、そして衝撃のラスト。ノナプルナインちゃんに襲いかかる試練を一緒に一つずつ解決していって下さい。かなりオススメです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<真実はノナプルナインちゃんの頭の中にある。それこそ世界を脅かす狂気そのもの。>

 果たしてノナプルナインちゃんは何者なのでしょうか?最初はちょっと頭のネジが緩いけどそれなりの常識は持っている素直なヒロインだと思っていたのですが、進めていくうちに嫌に感情の切り替えが早かったり分析が好きだったりとイメージが変わっていきました。特に最後、目の前でオクタが殺されたのにそれに対して悲しんだり震えたりするのも一瞬、すぐに分析を始めてしまいには「本当に、おもしろいねぇ!」ですからね。これには私も怖いと思ってしまいました。

 アウト・オブ・オーダーは観測者やモニターが干渉しない世界なのだそうです。唯、R&Dセンタービル32Fという環境と記憶を失った被験体だけが存在する世界でどのような相互作用をするのか見届けるものです。結果として生き残った被験体はノナプルナインちゃんただ1人。この結末はIMIにとっては決して喜ばしいものではなかったみたいですね。破滅的結末。確かに被験体同士が殺し合う結末なんて破滅的としか言えないのでしょう。ですが私達はまだ破滅の何たるかすら分かっていないのです。この事件の真実、そして被験体を用意した目的を。

 恐らく間違っていないと思っているのですが、あのR&Dセンタービル32Fはそれ自体が巨大な実験室なのだと思います。ノナプルナインちゃんがノナプルナインなのは例えでも何でもなく、本当に999999999番目の被験体なのだと思います。恐らく最初の部屋に居たミイラですら相当後半に用意された被験体。もしかしたらあの部屋だけ時が止まっているか、はたまた繰り返しているのかも知れません。そんな途方もない時間と労力をかけてIMIが行っている実験の目的は何なのか。知ってしまえば誰もが絶望し命を落としたくなる真実とは一体何なのか。間違いなく私達プレイヤーの想像を超えてくると思います。

 そしてやはり一番重要になるのはノナプルナインちゃん本人です。彼女の「真理に到達するのに必要なもの以外を全て剥ぎ取られたような性格」は確かに999999999番目の被験体になるまでに得られたデータから作られたのだと思います。では彼女の中に眠っている何らかの記憶の正体とは何なのでしょうか?これはもしかしたら、ノナプルナインちゃんの記憶の中身を引き釣り出す為に用意された実験なのかも知れません。彼女の記憶の中身を引き釣り出せるのであれば何をしても構わない。そのような狂気が記憶回復プログラムの狂気にそのまま結びついているのだと思います。真実はノナプルナインちゃんの頭の中にある。それこそ世界を脅かす狂気そのもの。そんな気がします。

 いずれにしてもこのアウト・オブ・オーダーは番外編です。この先には何もありません。後は本編の中で観測者とモニターが干渉したときにどうなるかを見守る事ですね。頭部爆破事件、IMIの幹部及び研究員の失踪、R&Dセンタービルの封鎖、謎の触手人間、記憶回復プログラム。今はまだ言葉だけはひとり歩きしている状況ですが、いつかそれらが全て収束し真実をさらけ出してくれればと願っております。次は本編でお会いしましょう、ノナプルナインちゃん。


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