M.M 西暦2236年の秘書




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
4 9 - 70 1〜2 2014/5/28
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<マスコの可愛さと、それ以上に魅力的なBGMの力を堪能してください>

 この「西暦2236年の秘書」という作品は同人サークルである「Chloro」で制作されたビジュアルノベルです。Chloroさんとの出会いはCOMITIA108で同人ゲームサークルを回っている時でして、この時同時に出ていたサークル部活動である「ノベルゲーム部」のサークルの1つでもありました。西暦2236年というタイトルに加えてパッケージに書かれている女の子のどこかサイバーな雰囲気で十二分に近未来な雰囲気が伝わり、そういえば最近プレイしていないジャンルでもあったという事で是非プレイしようと思い今回のレビューに至っております。感想ですが、とにかくヒロインが可愛いにつきますがそれ以上に近未来な雰囲気のBGMに心惹かれました。

 個人向けスマートツールスという変形自在のスマホの様な機器が当たり前に存在する未来の世界、そこではスマートツールス用のアプリである「PASS」と呼ばれるA.I.秘書システムが普及しておりました。未来の進化した技術力によってまるで本当の人間のように振る舞うPASSの中のA.I.、取り分け主人公であるヨツバは自身のPASSであるマスコを友達以上のパートナーとして認識しておりました。本作はそんなヨツバとマツコが出会ってから年数が経ち、西暦2236年の1月1日を迎えとある出来事が起こったところから物語が始まります。

 最大の魅力は間違いなくPASSであるマスコの可愛さだと思います。A.I.な存在ではありますがもう殆ど人間のように振る舞いますので、ある日突然自分専用の秘書がやって来たという事と同じです。そしてそんな秘書が嫌な顔せずユーザに対して好意を持って接してくれますのでもう可愛いという言葉以上の形容がありませんね。そしてマスコの好意のすごいところはただユーザに対して絶対服従という事ではなく、恥ずかしがったり嫌な事に対しては拒否したり、ユーザの命令だけではなく自分で判断して気を使ってくれたりとちゃんと人間らしい振る舞いをするところです。プレイヤーも是非マスコが自分専用の秘書であるかの様に思いながらプレイして頂くと尚の事可愛く思えると思います。

 そして私個人的にはそんなマスコの可愛さ以上にBGMに惹かれました。西暦2236年という事で近未来な設定である訳ですが、それを一番表現している要素がBGMにあると思いました。使われている楽曲はシンセサイザで打ち込みされたような機械的なサウンドに加えてテクノでよく聞くビートを刻んだものが多いです。目を瞑って聞いて思い浮かぶ景色は、きっとミキサーを触りながら音量調節しているDJや無数の音響機材に囲まれてイヤホンを被っているコンポーザの姿ですね。何が言いたいのかといいますと、BGMに生音の要素を微塵にも感じさせないのです。そしてそれがそのまま近未来のイメージと直結します。私はもうこのBGMだけでテンションが上がってしまって、終始気分が高揚したまま最後までプレイしてしまいました。

 プレイ時間的には1時間ちょっとで終わりました。思ったよりも短い内容でしたが、マスコの可愛さは十二分に伝わりましたのでそれだけで良かったのかなと思っております。個人向けスマートツールスという架空設定の機器の説明も分かりやすかったですし、本当にこんな未来が待っているのかもしれないと素直に思いました。マスコと一緒に西暦2236年ではどのようなコミュニケーションが行われているのかを是非堪能して頂ければと思います。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<マスコは人間ではありませんが、人間以上に人間性に溢れている存在だと思いました>

 まずもってマスコが可愛かったです。自分がA.I.であると認めておきながら人間と遜色ない振る舞いは、ヨツバのセリフではありませんが本当に人間なのではないかと錯覚させる程の魅力を持ってました。そして人の心とは何か、プログラムとは何かといった哲学的な問いも出され、ヨツバの葛藤が痛いほど伝わりました。

 どんなに人間のように振舞ったとしてもマスコはどうしてもA.I.です。それはヨツバもそうですしマスコ自身もそう言ってますし他の誰もがそのように思っております。その為そもそもマスコに対して「どうして人間じゃないのだろう?」という問いかけは全く意味を成さないものであり、そんな問いを思いつく事そのものが愚かな事なのかも知れません。ですがそんな愚かな事を考えるのがまさに人間らしさだと思いました。マスコをA.I.と認識しているという事と、A.I.だから人間と同じように接しないと決め付ける事は全く別物だと思います。その構図がヨツバとヒメ先輩に当たると思います。私もどちらかと言えばヨツバの様に思ってしまうと思います。

 しかしそうなってきますと人間であるという事と人間性を持っているという事は、果たしてイコールなのか分からなくなってしまいます。ひょっとしたら、ヒメ先輩とマスコを比べたらマスコの方に人間性を感じるかも知れません。作中でも「人間性とプログラム」についてのヨツバの葛藤が書かれてました。確かにマスコの言葉一つ一つはプログラムからはじき出されたものです。ですがそれを受け取る側が人間性を持っていると思えば、それはもしかしたらただ単にプログラムなのではなく意味を持った言葉なのかも知れません。

 人間性とは何なのでしょうか。私の中では自分で考えて振舞い、加えて人間的な倫理観を持っている事だと思っております。マスコはA.I.ですし発する言葉はプログラムで演算したものです。ですが演算するという事は考えるという事と同じだと思っております。だから私にとってマスコは十分人間性を持っている存在だと思っております。彼女がヨシナガとの会話のログを読み返して、それがヨツバにバレた時に発した「恥ずかしい」というセリフ、これが唯のプログラムで人間性ではないと誰が思えるでしょうか。そして倫理観と上で書きましたが、例えばニュースで報道される無差別殺人を行うような人間に対して誰が人間性があると思えるでしょうか。常識では考えられない行動をとれば、それはどうしようもなく阻害され人間性を失ってしまいます。マスコという存在、それは人間以上に人間性を持ちながらただA.I.である存在なのだと思いました。まとまらなくなりそうですので今回はこの辺りで失礼します。マスコの様な可愛い秘書がいて欲しいと心から思えた作品でした。


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